AIとデータが広げるGo-to-Marketの次章 ― 医療関係者と従業員双方の体験の進化を通じて、革新的な医薬品をより多くの患者さんへ届ける | 武田薬品
AIとデータが広げるGo-to-Marketの次章 ― 医療関係者と従業員双方の体験の進化を通じて、革新的な医薬品をより多くの患者さんへ届ける
医療関係者のニーズ変化に応え、Go-to-Market変革は次のステージへ
製薬業界を取り巻く環境は大きく変化しています。医療関係者の情報収集手段は多様化し、多様な情報に触れる中で、必要な情報を適切に選択する重要性が高まっています。また、製品特性や疾患領域によって求められる情報や接点は異なり、一律的な情報提供だけでは十分な価値を届けることが難しくなっています。
こうした変化を踏まえ、タケダではGo-to-Market(GtM)変革を推進しています。データ・デジタル・AIを活用しながら、医療関係者、従業員、テクノロジーの三つの視点から価値提供のあり方を見直し、より良い体験の実現を目指しています。
私たちが目指しているのは、単にデジタルチャネルを増やすことではありません。MRによる活動、デジタルチャネル、AIによる分析を組み合わせ、医療関係者一人ひとりに応じた最適な関わり方、すなわち最適なエンゲージメントを実現することです。
2026年度には異なる特性を持つ5つの製品において新たなコマーシャルモデルの検証を進めています。そこから得られた知見は国内の他製品へ展開するとともに、グローバル全体での医療関係者の体験向上にも活用する予定です。
AIが導く、医療関係者との新しいエンゲージメントNBAが実現するGo-to-Market変革
GtM変革の中核技術の一つが、AIを活用した「NBA(Next Best Action)」です。 NBAは、製品の納入実績やデジタルチャネル上での行動データに加え、Real World Data(RWD)や市場データなどを活用しながら医療関係者ごとのニーズや関心を分析し、「誰に」「いつ」「どのチャネルで」情報を届けるべきかを提案します。
このNBAは医療関係者を理解する精度の向上に寄与しているだけでなく、その推奨に基づいて適切なアクションを実行することで、実際のビジネス成果にもつながっています。新製品を対象とした取り組みでは、NBAによる推奨が発出された施設は、それ以外の施設と比較して新製品の導入につながる割合が約2.35倍高い結果となりました。さらに、推奨された活動を実施した施設では、未実施施設と比較して約1.6倍高い新製品の導入率となっています。
この仕組みの基盤となるのは、データやAI技術そのものだけではなく、それを継続的に進化させ、医療関係者への提供価値へ結びつける運用体制です。タケダでは、3つの成功要因がGtMの価値創出を支えています。以下では、それらをNBAの事例とともに紹介します。
グローバルとローカルの融合
タケダではグローバル共通のデータ・AI基盤を活用しながら、日本市場や製品特性に応じた最適化を行っています。世界各国で得られた知見を共有し、日本での学びをグローバルへ還元することで、効率性とローカル最適化を両立しています。
社内専門人材による継続的な改善
特に、ワクチンのように季節性の影響を受ける製品や、新製品や希少疾患領域のように過去データが限られる製品では、汎用的なAIモデルだけでは十分な分析や予測が難しい場合があります。そこでタケダでは、AI専門人材、データサイエンティスト、エンジニア、そしてビジネス領域の専門人材が連携し、製品や市場への深い理解を反映しながらAIモデルを継続的に改善しています。
現場との共創による進化
社内の開発者やデザイナーはMRなどの利用者と継続的に対話し、提案内容やユーザー体験を改善しています。現場からのフィードバックをAIモデルへ反映することで、提案精度と実行品質を高める好循環を生み出しています。
情報提供のあり方を再定義する、コンテンツ×AI活用専門性と品質を保ちながら、より迅速な情報提供へ
医療関係者のニーズが多様化する中、「どの情報を、どのタイミングで届けるか」の重要性は高まっています。一方、コンテンツ制作や動画編集にはデザイナーなどの専門的な知識やスキルが必要であり、多くの場合は外部パートナーとの連携が前提となっていました。また、医薬品情報のコンテンツには、順次更新される業界ルールや社内基準への厳格な対応が求められるため、企画から公開までに長い期間を要することが一般的でした。 タケダでは、こうした課題を解決するため、企画・制作・品質管理・活用までのプロセス全体にAIを導入しています。
企画・制作の効率化
企画案やデザイン案の作成、海外資材の翻訳・参照に生成AIを活用しています。また、AIアシスト機能を備えた制作ツールを導入し、担当者自身が試作や修正を行える場面が増えています。これにより、企画意図の伝達や修正に要する工数を削減するとともに、新たなアイデア創出にもつながっています。
品質管理・レビュー支援
タケダでは過去の指摘事項や承認済みコンテンツを学習したAIを活用し、修正漏れや更新漏れを確認しています。また、本審査前の予備レビューのプロセスの一部を自動化することによって、本審査掲題までの期間も短縮しました。これによりレビュー品質向上と手戻り削減を実現しています。
より迅速で最適な情報提供へ
これらの取り組みにより、企画から公開までの期間は従来の数か月から最短1か月程度まで短縮されました。また、コンテンツを構造化しNBAなどのAI基盤と連携することで、「誰に、どの情報を、どのチャネルで届けるべきか」をより精度高く判断できるようになっています。その結果、医療関係者は必要な情報により迅速かつ適切にアクセスできるようになり、同時に業務効率化や、品質・ガバナンスの向上も実現しています。この取り組みは国内にとどまらず、グローバル展開も見据えて進められています。
部門を超えて価値を届けるために一貫した体験設計とデータによる価値創出の可視化
GtM変革を継続的に推進するためには、AIやデジタルの導入だけでなく、組織全体で共通の体験価値を定義し、その成果を可視化する仕組みが重要です。
Experience Coreによる一貫した体験設計
デジタル化が進む中で重要なのは、単にチャネルを増やすことではなく、どの接点においても一貫した価値を届けることです。GtM変革を進める中で認識されたこの重要性に対して、私たちは「タケダらしい体験提供」の指針としてExperience Core(エクスペリエンス コア)を策定しました。
策定には事業部長をはじめとする経営層、医療関係者と接する第一線の従業員、メディカル、コマーシャル、デジタル部門が参画しました。私たちの揺るがない価値観である「タケダイズム」、その中の誠実にはPTRB「P-T-R-B(患者さんに寄り添い"Patient", 人々と信頼関係を築き"Trust", 社会的評価を向上させ"Reputation", 事業を発展させる"Business")」が含まれています。そのうえで私たちは、タケダらしさを実際の顧客体験としてどのように届けるかを議論しながら体系化しています。
Experience Coreはあらゆるチャネルやサービスに共通する体験設計の指針として活用されており、部門横断での意思統一と継続的な改善を支えています。
データによる価値創出の可視化
AIやデジタルの活用において重要なのは、それがどのような価値を生み出しているかを継続的に把握し、改善につなげることです。タケダでは、デジタルを通じた価値創出を定量的に捉え、可視化する取り組みを進めています。
その一つが、統合報告書などに記載されているTakeda IDの利用者数です。Takeda IDは、タケダのデジタル環境を利用するための安全で統一されたデジタルIDとして2019年に開発され、現在では個々の医療関係者に合わせてデジタル体験を提供する要として活用されています。タケダ全体での利用者数は2026年3月末時点で58,951人に達しており、日本における2025年度の利用者数は前年度比170%増となりました。
これは医療関係者向けサービスの拡充だけでなく、MR活動とデジタルを組み合わせたオムニチャネル活動の成果を示しています。
タケダのGo-to-Market、これからの展開
タケダはGtM変革を通じて、製品や医療関係者の特性に応じてデータ・デジタル・AIを活用する新たなコマーシャルモデルを推進しています。前述のNBAの取り組みに見られるように、事例や知見の蓄積、AIモデルの進化、そして社内専門人材の高度化により、従来はデータ不足が課題であった領域においても、効果的な予測や最適な医療関係者とのエンゲージメントが可能になりつつあります。また、デジタルやAIを活用した疾患啓発や患者支援、外部パートナーとの共創を通じて、より良い体験の実現にも取り組んでいます。 タケダが目指しているのは、デジタルやAIを活用することそのものではありません。医療関係者が必要な情報へ適切にアクセスでき、従業員がより価値の高い活動に集中できる環境を実現することで、その先にいる患者さんへの価値創出をさらに進化させることです。 これからもタケダは、GtM変革を含めたDXの取り組みを通じて事業変革を推進し、患者さんを中心とした価値創出を軸に、製薬企業としての新たな可能性を切り拓いていきます。
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