価値創造に向けた取り組み | タケダ2025年統合報告書
価値創造に向けた取り組み
開発期間を短縮して新たな治療選択肢を迅速に患者さんにお届けするため、自社の研究開発能力を高め、DD&Tを活用していく。それはまさに、タケダのサステナビリティを体現していますね。
より良い医薬品を迅速に患者さんへお届けするためのデジタル・パイプラインの確立
医療を取り巻く環境はデジタル技術により変革を遂げつつあります。例えば、臨床試験での正しい服薬を促すスマート包装、また、AIを活用した診断サポートやリアルタイムでのモニタリングといった形で、実用化されています。タケダでは、社内全体を通じて、業務の改革や研究の加速、医薬品の開発の促進に、AIを含め新たなデータ・デジタル&テクノロジー(DD&T)を取り入れつつあります。
そうして過去3年間で、研究開発パイプラインと並ぶデジタル・パイプラインを作り上げてきました。例えば臨床試験結果の解析処理から製造プロセスの効率性向上まで、AIの利用がますます増えています。
またAI分野のパートナーシップに力を注ぎ、より多くのリアルワールドデータを用い、さらにAIや予測分析で患者さんのケアや患者さんや医療従事者との円滑な交流を促進するアプリも開発しています。さらに、デジタルソリューションの開発や拡大に努める他、必要な整備作業の予測や製造工程の最適化にAIを活用しています。
データとデジタルの活用による潜在的メリット
研究開発
- 創薬サイクルの短縮
- 臨床試験設計の改善
- 研究における知見の精度の向上
製造と供給
- 生産性の向上と主要プロセスの時間短縮
- 作業中断のリスク低減と在庫管理の最適化
患者さんや医療従事者との連携
- 特に慢性疾患を抱える患者さんが個々の状況に合わせてより適切に管理できるよう支援する
- 患者さんや医療従事者との関わりを促進する
テクノロジーの活用は従業員から始まります。タケダでは、データ・デジタル&テクノロジー(DD&T)において必要となるスキルを従業員が身に付けられるよう、デジタルデクステリティプログラム(デジタルスキル向上プログラム)を実施しています。さらに、学習プラットフォームであるEveryday AIなど新しい学習の機会を提供することで、デジタル分野の専門家でなくても、全従業員がデジタル変革した環境で活躍できるスキルを身につけます。
誰もが受けられる医療を目指して
私たちは、医薬品をできるだけ多くの必要とする方々にお届けできることを願っています。しかし、多くの国々で医療制度がひっ迫している現状では、この願いが必ずしも実現するとは限りません。そこで、私たちは政府や非政府団体と協力し、財源・リソースが不足している多くの低中所得国において、医療制度の強化や医療従事者の育成、診断率の改善、臨床ケア水準の向上に取り組んでいます。
多くの低中所得国では、一人当たりの医療費の支出が高所得国の平均を大幅に下回っています。それに加え、人口の増加や気候変動、がんや心臓病といった非感染性疾患の増加も問題視されています。こうしたすべての要因が、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの開発途上国の医療制度を圧迫しています。
タケダは世界各地で低中所得国における医療サービス拡充のための非営利団体 のプログラムに寄付をしています。タケダの行うグローバルCSRプログラムは、長期にわたり支援を行うことを前提としています。なぜなら、医療を取り巻くシステムの改善に迅速な解決策はなく、時間を要することを知っているからです。
このグローバルCSRプログラムは2016年に始まりました。以来、顧みられない熱帯病への取り組みから遠隔地域への医療の提供まで、さまざまな取り組みに対し、総額で約2億ドルの支援を約束してきました。
デング熱流行地域にワクチンを届けるために
近年、デング熱の発症者数は急増しています。その主な原因の1つとして、気候変動が挙げられます。気候変動による気温の上昇と降雨パターンの変化により、デング熱を媒介する蚊が発生しやすい環境になっているためです。私たちは2022年以降、関連する政府機関、製造業者、非政府団体(NGO)と緊密に連携してアジアとラテンアメリカに暮らす数百万人をデング熱の罹患の危険から守るため、タケダのデング熱ワクチンであるQDENGA®のへの持続的なアクセスの推進に努めています。
世界保健機関(WHO)によると、2024年には過去最多となる1,430万人を超える症例が報告されました。患者さんの多く(1,300万人以上)はラテンアメリカの人々ですが、症例が報告されなかったり、誤診されたりすることも多いため、実際にはさらに多くの感染者が存在すると考えられています。またデング熱は流行地域の病院や医療制度への大きな負担となる可能性があります。
QDENGAは初めての販売製造承認から2年以上経過し、現在では29カ国で使用可能です。このワクチンは、デング熱の既知の4つのウイルス型すべてに有効であることが証明されています。またQDENGAは、デング熱の既往歴に関わらず接種が認められている唯一の ワクチンです。需要の高まりに対応するため、私たちはQDENGAの製造能力の向上を急いでいます。2030年までに年間1億回接種分の製造を目指しています。
QDENGAを必要とする人々に届くよう、各国政府と緊密に連携しています。その際私たちは、デング熱の影響を最も受けている国々を優先しています。QDENGA は、WHOの事前認証ワクチンリストに収載されています。これにより、ユニセフ、 汎米保健機構(PAHO)、GAVIワクチンアライアンスなどの国際機関がQDENGAを使用できるようになるため、このリスト収載には非常に大きな意味があります。