医薬品の品質管理ってナンダ? | 武田薬品
医薬品の品質管理ってナンダ?
患者さんの「安全と安心」を支える厳格な品質と革新
私たちは、医療関係者や患者さんに安心して医薬品を使っていただけるよう、医薬品が市場に出るまでに多くの試験や検査を行い、品質管理を徹底的に行っています。世界中の患者さんへ医薬品をお届けしているタケダで、品質管理・品質保証を行う尾田さんと水戸さんのお二人に、お話を伺いました。
世界中の患者さんに薬を届けるために、各国の基準を厳守
— そもそも、「品質管理」とは何でしょうか。
【水戸】わたしたちが行っている品質管理は、医薬品が安全かつ期待どおりの効果を発揮するかを幾度となくチェックする製造プロセスです。医薬品の元となる原料の受け入れ時から、製造・包装・出荷まで全ての工程を対象とし、各工程で求めている品質に達しているかを、さまざまな検査や試験で確認します。
【尾田】人の命や健康に直接影響する可能性があるので、適切な基準を満たしているかを何重にもチェックする体制を設けています。100を超える試験を各工程で行い、細かい数字を日々追いかけ、少しの変化も見逃さないようにしています。
熟練した試験者が手作業で試験する様子
高速液体クロマトグラフィーにより医薬品の純度や安定性を試験
— 具体的には、どのように作業を行いますか。
【尾田】医薬品の原料や包装の材料となる資材を受け入れた段階で、純度や粒子サイズ、密度などの要件を多角的に検証します。例えば、原材料に含まれる微量成分についても、10ppm(0.001%)以下という厳密な基準で管理しています。
【水戸】製造の段階では、医薬品の中間体や最終製品を検査し、有効成分の含有量や体内で放出される様子、外観などが規格に適合しているかを判定します。また、出荷後も患者さんに安心して医薬品を使ってもらえるように、品質管理の一環として、複数年にわたり品質をモニタリングしています。
― どんな基準に合わせて品質を管理しているのでしょうか。
【尾田】世界では主に、日本の厚生労働省、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)の3極それぞれが定めた基準が世界標準になっています。なかでも、FDAの基準は非常に高いと広く認識されており、数々の厳格な要求事項に対応する必要があります。
タケダは、世界中の患者さんに医薬品をお届けするため、FDAをはじめとする世界基準に準拠するだけでなく、日本を含め、医薬品が使用されるそれぞれの国の法令や基準にも適合するよう品質を管理しています。また、少しでも早く患者さんに医薬品をお届けできるよう、製造や品質管理プロセスの最適化にも取り組んでいます。
デジタル技術とチームの力で品質管理をより強固に
― 逸脱を早期に検知するタケダ独自の取組があると聞きました。
【尾田】定められた基準を守るだけでなく、タケダは独自で品質管理体制を強化しています。一例として、試験結果を自動的に集計し、リアルタイムで監視する仕組みを導入しています。この仕組みにより、基準から逸脱していなくても、通常とは異なる傾向が見られた場合、品質保証部門や製造部門などと連携し、すぐに原因調査を開始することができます。
【水戸】品質試験の結果を、迅速に入手する技術の開発・導入も行っています。最近では、従来の半分程度の時間で、微生物を検知する技術を導入しました。逸脱発生前に、その兆候をいち早く見つけることで、医薬品の安全性を担保する努力を行っています。
— 品質管理チームのリーダーとして何を大切にしていますか。
【水戸】上下関係にとらわれず、率直に話し合える場作りを大切にしています。現場では、どんなに手順通りに進めても、予期せぬトラブルが起きることがあります。だからこそ、メンバーが安心して「ちょっと気になること」や「うまくいかなかったこと」を話せる空気づくりが重要と思っています。小さなエラーもチームで共有すれば、早期の改善につながり、結果的に品質を守ることにつながります。
【尾田】私も、チーム全員が安心して品質管理・保証の議論ができる環境づくりを意識しています。トラブルを報告してくれた担当者には、まず「ありがとう」と伝えるようにしています。
品質管理の日々の改善は、患者さんを想う現場の声から生まれるものです。一人ひとりが持つ「患者さんのために」という共通の想いを発揮できるようにするのが、リーダーの役割と思っています。
AIと自動化活用で人にしかできない課題解決に注力
— データやデジタルの活用で、品質管理は将来どのように変化するでしょうか。
【水戸】品質管理は地道な作業の繰り返しですが、そこにデジタル技術を掛け合わせることで、現場は着実に進化を続けています。たとえば、製造後ではなく製造中にリアルタイムで品質を確認できる「インライン試験」の導入を進めています。また、AIによるトレンド分析を活用することで、日々の微細な変化も捉えられるようになってきました。こうした知見を製造工程に迅速にフィードバックできる体制が整いつつあり、品質管理のスピードと精度の両面で、大きな変化が起きつつあります。
【尾田】これまで手作業で行っていた試料の秤量や検体の搬送なども、今後自動化される予定です。ヒューマンエラーを削減できるだけでなく、人にしかできない判断や工夫に、より多くの時間を充てられるようになります。その時間を予防的な活動に再投資することで、品質管理の対応力強化やともに働く仲間のウェルビーイング向上につながると考えています。
誠実な行動の積み重ねが紡ぐ医薬品への信頼
― 最後に、品質管理にかける想いをお聞かせください。
【尾田】私たちチームの仕事は、高い基準に基づく妥協のない品質試験を通じて、医薬品の安全性を保証することです。地道な努力を継続しながら、AIや自動化などの新しい技術も積極的に取り入れ、品質管理のあり方そのものを進化させています。患者さんと医療従事者の皆さんに安心して医薬品を使っていただけるよう、守るべき品質と変わり続ける技術の両方を追求しています。
【水戸】データに正直であること、その結果を公正かつ誠実に受け止めること、不屈の精神で改善すること――。私たちの価値観である「タケダイズム」に基づく行動の積み重ねが、信頼につながると考えています。240年以上守り続けてきた品質と信頼を礎に、変化を恐れず挑戦を続けながら、患者さんの健康を支える医薬品を、これからも届けていきたいと思います。
Profile
尾田 範子
大阪製薬品質部
品質管理グループ グループマネジャー
医薬品の品質管理グループ統括し、安全かつ高品質な医薬品を患者さんに提供している。
水戸 文弥
大阪製薬品質部
セルセラピー大阪品質 ヘッド
医薬品の品質管理および品質保証を担い、製品供給体制の確立と継続的改善を推進している。