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IBDの「治療の限界」の突破を目指す | 武田薬品

顕微鏡を覗いている人

IBDの「治療の限界」の突破を目指す

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2025年11月28日

私たちは、世界的に患者数が増えつつある疾患が抱える課題に対応するため、あらゆる角度から研究を実施しています。

「炎症性腸疾患(IBD)の治療は、これまでにも驚くべき進歩を遂げてきました。しかし、私たちがやるべきことはまだたくさんあります。IBD患者さんは、私たちがこれからも研究を続け、この疾患の新たな治療選択肢を模索することを求めています」

Marcelo Freire

消化器系疾患領域グローバル メディカル アフェアーズ バイスプレジデントであるマルセロ・フレイレ医学博士は、このように評しています。フレイレ博士は、クローン病や潰瘍性大腸炎とともに生きる患者さんの暮らしが豊かになるよう、10年以上にわたり活動してきました。この2つの疾患は総称してIBDと呼ばれますが、症状はそれぞれ異なります。私たちはIBDの「治療の限界(Therapeutic Ceiling)」を突破する必要があると、マルセロ博士は認識しています。

この慢性の進行性疾患には新たなアプローチが必要だとフレイレ博士は指摘します。つまり、新たな戦略、新たな医学的介入、新たな治療モデルです。「IBDには未だに多くのアンメット・メディカル・ニーズが存在します。次の突破口を切り開くため、私たちはこの疾患への取り組みに拍車をかける必要があります」

IBDの重症度、範囲、および治療に対する反応は患者さんによって大きく異なる場合があります。推定680万人に及ぶ世界中のIBD患者さんの多くは1、治療とケアの進歩により生活の質が向上しています。しかし、例えば潰瘍性大腸炎の場合、寛解率は停滞しており、その割合はわずか20~30%に留まっています2。また治療選択肢が増えているにも関わらず、疾患が進行した場合は手術が必要になるケースが、現在も非常に多く見られます3

IBDの患者さんたちの言葉には、不安や先行きの不透明さ、アンメット・ニーズが表れています。『Journal of Crohn's and Colitis』が2022年に実施した定性調査では、フォーカスグループと専門家のパネルディスカッションを通して、患者さんたちが手術や長期的な臨床的寛解、および生活の質に対する不安を抱えており、さらには心理的なサポートやより充実したコミュニケーションの必要性にも触れています3

Dr Jean-Frederic Colombel

「タケダは、現状に甘んじず果敢に新しいアイディアや技術を取り入れ、IBDに未だ存在する明らかな課題やアンメット・ニーズを解決しようとしています」

ニューヨーク、マウントサイナイ・アイカーン医科大学IBDセンター長、ジャン=フレデリック・コロンベル博士

社会、環境、およびライフスタイルが変化するに従い、IBD患者さんの数も世界的に増加しています5,6。一方、現在は治療費を手の届きやすい範囲に抑えることや予後に対する患者さんの期待も変化しているため、それらと相まって各国の医療予算への負担要因となっています。

IBD分野における35年間の経験と、患者さんのためにイノベーションを追求してきた240年以上にわたる歴史を持つ私たちには、これらの課題に立ち向かう力があります。

フレイレ博士は次のように説明しています。「私たちは、これまでの治療でよく用いられている『サイクリング』手法について研究しています。この手法は、患者さんが一連の薬剤を投与された上で、どの治療計画が効果的かを見極めるというものです。治療計画の早い段階で適切な治療法をタイムリーに介入することで、治療予後が向上する可能性があると考えています」

「また私たちは、薬剤介入の効果を高めて新しい選択肢を提供することも目指しています」と、フレイレ博士は続けます。「そこで、他社製品も含めたさまざまな薬剤を対象に併用療法の研究を複数開始しました。治療管理の開始段階から併用療法の可能性を探ることにより、治療成果を上げたいと考えています。その上で、患者さんの反応や治療ニーズに基づいて、維持療法を調整していくという流れです」

私たちはさらなる研究も進めています(図)。症状の管理のみという従来のスタイルにこだわらず、診断ツールも活用し、新たな治療目標を設定することで、病状の経過がどのように変わるかを追跡しようとしているのです。顕微鏡により組織・細胞の構造を観察する組織学的評価や、超音波検査も選択肢のひとつです。

後者はより患者さんに優しい介入方法であるとフレイレ博士は言います。また、腸の全層における治癒をより正確に評価する上でも役立ちます。「複数のバイオマーカーや可視化によって、病状と疾患進行の予測やモニタリングに役立てることができれば、再燃を減らし、手術の必要性を低減させるような介入が可能になるかもしれません」とフレイレ博士は説明します。「いつか疾患進行を完全に防ぐことすらできるかもしれません」

これは、複数のパートナーから成り、タケダが主要な役割を担う国際的プロジェクト「European INTERCEPT」の最終目標でもあります。発症の前に症状の出現を未然に防ぐことを目的に、バイオマーカーを使った試験が今後開始される予定です。

IBD分野での知見を蓄積しようとするタケダの継続的な取り組みは、社外の専門家からも評価を得ています。ニューヨークのマウントサイナイ・アイカーン医科大学IBDセンター長のジャン=フレデリック・コロンベル博士は、私たちと共同研究を行っている学術パートナーの一人です。同博士は、「タケダには、科学を前進させて患者さんの治療予後を向上させたいという明確な意志があります。現状に甘んじず果敢に新しいアイディアや技術を取り入れ、IBDに未だ存在する明らかな課題やアンメット・ニーズを解決しようとしています」と述べています。

炎症性腸疾患に関する新たな知見への探求


このように実施されている研究は現在9件あります。最初のデータ公表は2024年に始まり、最終結果の公表は2028年を予定しています。これらの研究は、患者さんの重要なニーズを詳しく調べられるように、またクローン病と潰瘍性大腸炎の臨床上の効果を向上させられる価値ある知見創出を目指して設計されています。

• 6件のグローバル研究と、3件の米国を中心とした研究が実施されています。

6つの治療薬

との併用または単剤での使用

600施設以上

で実施

1,500名以上

の患者さん

※所属は制作当時のものです。

  1. Alatab S, Sepanlou SG, Ikuta K, et al. The global, regional, and national burden of inflammatory bowel disease in 195 countries and territories, 1990–2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2020;5(1):17-30. doi:10.1016/S2468-1253(19)30333-4
  2. https://www.thelancet.com/journals/langas/article/PIIS2468-1253(21)00065-0/abstractGo to https://www.thelancet.com/journals/langas/article/PIIS2468-1253(21)00065-0/abstract
  3. Dai N, Haidar O, Askari A, Segal JP. Colectomy rates in ulcerative colitis: a systematic review and meta-analysis. Dig Liver Dis 2023;55:13–20.
  4. Elise Schoefs, Séverine Vermeire, Marc Ferrante, João Sabino, Tessy Lambrechts, Luisa Avedano, Isabella Haaf, Maria Stella De Rocchis, Andrea Broggi, Magdalena Sajak-Szczerba, Roberto Saldaña, Rosanne Janssens, Isabelle Huys, What are the Unmet Needs and Most Relevant Treatment Outcomes According to Patients with Inflammatory Bowel Disease? A Qualitative Patient Preference Study, Journal of Crohn's and Colitis, Volume 17, Issue 3, March 2023, Pages 379–388, https://doi.org/10.1093/ecco-jcc/jjac145Go to https://doi.org/10.1093/ecco-jcc/jjac145
  5. Global evolution of inflammatory bowel disease across epidemiologic stagesGo to https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40307548/. Hracs L, Windsor JW, Gorospe J, Cummings M, Coward S, Buie MJ, Quan J, Goddard Q, Caplan L, Markovinović A, Williamson T, Abbey Y, Abdullah M, Abreu MT, Ahuja V, Raja Ali RA, Altuwaijri M, Balderramo D, Banerjee R, Benchimol EI, Bernstein CN, Brunet-Mas E, Burisch J, Chong VH, Dotan I, Dutta U, El Ouali S, Forbes A, Forss A, Gearry R, Dao VH, Hartono JL, Hilmi I, Hodges P, Jones GR, Juliao-Baños F, Kaibullayeva J, Kelly P, Kobayashi T, Kotze PG, Lakatos PL, Lees CW, Limsrivilai J, Lo B, Loftus EV Jr, Ludvigsson JF, Mak JWY, Miao Y, Ng KK, Okabayashi S, Olén O, Panaccione R, Paudel MS, Quaresma AB, Rubin DT, Simadibrata M, Sun Y, Suzuki H, Toro M, Turner D, Iade B, Wei SC, Yamamoto-Furusho JK, Yang SK, Ng SC, Kaplan GG; Global IBD Visualization of Epidemiology Studies in the 21st Century (GIVES-21) Research Group.Nature. 2025 Apr 30. doi: 10.1038/s41586-025-08940-0. Online ahead of print.
  6. Emerging role of environmental pollutants in inflammatory bowel disease risk, outcomes and underlying mechanismsGo to https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39179372/. Estevinho MM, Midya V, Cohen-Mekelburg S, Allin KH, Fumery M, Pinho SS, Colombel JF, Agrawal M.Gut. 2025 Feb 6;74(3):477-486. doi: 10.1136/gutjnl-2024-332523.

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