米国におけるデング熱ワクチン候補(TAK-003)の生物学的製剤承認申請の自主的取り下げについて

米国におけるデング熱ワクチン候補(TAK-003)の生物学的製剤承認申請の自主的取り下げについて


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2023年7月12日

当社は、このたび、当社のデング熱ワクチン候補(開発コード:TAK-003)について、米国食品医薬品局(FDA)との現行の生物学的製剤承認申請(以下BLA)の審査サイクル内では解決できないデータ収集に関する議論を経て、米国におけるTAK-003のBLAを自主的に取り下げましたので、お知らせします。米国におけるTAK-003に関する今後の計画は、旅行者およびプエルトリコなどの米国のデング熱流行地域に居住する人々のニーズを考慮して、さらに評価される予定です。TAK-003は、複数のデング熱の流行国および非流行国で承認されており、今後数年で更なる承認が見込まれています。

当社グローバル ワクチン ビジネス ユニットのプレジデントであるGary Dubinは「当社の臨床試験は、世界におけるデング熱の複雑な性質に対応するようにデザインされています。4.5年間にわたる追跡調査の結果、TAK-003はワクチン接種前の血清反応によらず、良好なベネフィットリスクプロファイルを示しており、当社はTAK-003が、デング熱に対する長期的な予防の一助となりうると考えています。世界では、増大するデング熱がもたらす負担と戦うという緊急性の高い公衆衛生ニーズが依然として存在することから、当社は、米国での次のステップを決定する一方で、引き続き、デング熱流行国の居住者および旅行者のために、各規制当局による審査を進め、人々のワクチンへのアクセス向上を図っていきます」と述べています。

TAK-003の有効性および安全性プロファイルは、8つのデング熱流行地域に居住する2万例を超える小児および成人を対象とした4.5年間の第3相試験を含む強固な臨床試験プログラムにより示されています。この臨床試験は、被験者脱落防止と治験実施計画書遵守をデング熱流行地域においても達成できるよう、世界保健機関(WHO)による第2世代のデング熱ワクチンに関するガイダンスに基づいてデザインされていました1

昨年、TAK-003は、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)から、欧州連合(EU)における承認とEU-M4all (旧称:Article 58)制度を通じての EU域外の国々における承認を目的とした医薬品に適用されるEMAが実施する並行審査の結果、欧州連合およびEU-M4all制度に参加している世界のデング熱流行国における承認を推奨する肯定的見解を得ています。以来、TAK-003は、欧州連合(EU)、英国、ブラジル、アルゼンチン、インドネシアおよびタイで承認されています。

デング熱は世界的な公衆衛生の危機であり、デング熱の脅威に晒されている世界中の何百万もの人々を支援するために更なる予防法が必要とされています。

TAK-003について

当社の4価デング熱ワクチン(TAK-003)は、4種のワクチンウイルス型すべての遺伝子型の“バックボーン”として弱毒化された生の2型デングウイルスをベースに構築されています2。小児および青年を対象とした臨床第2相試験のデータから、ワクチン接種前の血清反応が陽性の被験者群(血清反応陽性群)と陰性の被験者群(血清反応陰性群)のいずれにおいても、TAK-003が 4種類のデング熱血清型すべてに対する免疫応答を誘導し、これはワクチン接種後48ヵ月間持続することが示されました3。TAK-003の グローバル臨床第3相TIDES(Tetravalent Immunization against Dengue Efficacy Study)試験では、主要評価項目である本ワクチン2回目接種後12ヵ月の追跡調査期間におけるウイルス学的に確認されたデング熱(VCD)に対する全体的なワクチン有効性(VE)が達成され、また評価に十分なデング熱症例数を有するすべての副次評価項目(18ヵ月の追跡調査期間におけるデング熱による入院に対するVE、被験者の本ワクチン接種前血清状態別VEなど)についても達成されました。これらの試験の統合解析の安全性の結果から、重篤な有害事象(SAE)の発現率はTAK-003群で6.21%、プラセボ群で7.56%であることが示されました4。最も高頻度にみられた非自発的な有害事象(AE)は、上咽頭炎、上気道感染、ウイルス性上気道感染、ウイルス感染および発熱でした。

臨床第3相TIDES試験(DEN-301試験)について

二重盲検、無作為化、プラセボ対照のグローバル臨床第3相試験であるTIDES試験は、小児・若年層被験者を対象とし、4種すべてのデングウイルス血清型によって引き起こされる、ウイルス検査レベルで感染が確認されたあらゆる重症度の症候性デング熱の予防において、TAK-003を2回接種した際の安全性および有効性を評価しています5。被験者を2:1の割合で無作為に割り付け、 TAK-003 0.5 mL又はプラセボを0ヵ月時及び3ヵ月時に2回皮下投与しました。本治験は5つのパートで構成されており、パート1である主要評価項目の解析では、TAK-003の2回目接種後12ヵ月までのVEおよび安全性を評価しました。パート2では、さらに追跡調査を6ヵ月間追加し、副次評価項目であるデング熱による入院に対するVE、デングウイルスの血清型別VE、被験者のワクチン接種前血清状態別VEおよび症状の重症度別VEについての評価を行いました。パート3では、WHOの推奨に従ってさらに2年半から3年にわたって被験者を追跡調査することにより、ワクチンの有効性と長期的な安全性を評価しました6。パート4では追加接種後13ヵ月間の有効性および安全性を評価し、パート5では、パート4完了後1年間の長期的な有効性および安全性を評価します。

本試験はデング熱流行地域であるラテンアメリカ(ブラジル、コロンビア、パナマ、ドミニカ共和国、ニカラグア)およびアジア(フィリピン、タイおよびスリランカ)にて実施されており、これらの地域ではデング熱予防のアンメットニーズが高く、重症型デング出血熱は小児の重篤な疾患および死亡を引き起こす主たる要因となっています6。ワクチン接種前の血液サンプルを本試験に参加するすべての被験者から採取しており、接種前の血清反応(デングウイルス感染歴の有無)別の安全性および有効性を評価することが可能です。当社および専門家で構成される独立データモニタリング委員会は積極的な安全性のモニタリングを継続して行っています。

デング熱について

デング熱は、最も急速に感染が拡大している蚊媒介感染症で、WHOは、2019年のグローバルヘルスに対する10の脅威の1つにデング熱を挙げています7,8。デング熱は主にネッタイシマカ、および比較的低い割合でヒトスジシマカによって媒介され、4 種のウイルス血清型すべてがデング熱または重症型デング出血熱を引き起こす可能性があります9。個別の血清型羅患率は地理、地域、国や季節によって異なり、また時間の経過とともに変化していきます10。ある血清型のウイルスに感染した場合、その血清型に対する免疫は一生涯続きますが、後に異なる血清型のウイルスに感染した場合、重症化のリスクが高まります7,11

武田薬品のワクチンに対する取り組みについて

ワクチンは、毎年350万~500万人の生命を救い、世界の公衆衛生に劇的な変化をもたらしました12。武田薬品は、約70年にわたり、人々の健康を守るため日本でワクチンを供給してきました。現在、当社のグローバルワクチンビジネスは、デング熱、新型コロナウイルス感染症、パンデミックインフルエンザ、ジカウイルス感染症など、世界で最も大きな課題となっている感染症に対し、最先端の取り組みを行っています。武田薬品はワクチン開発、製造およびマーケットアクセスに関する豊富な実績と深い知識を有しており、世界で最も緊急性の高い公衆衛生ニーズに対応すべく、パイプラインの充実に努めてまいります。詳細については、https://www.takeda.com/jp/science/areas-of-focus/vaccines/をご覧ください。

武田薬品について

武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献することを目指しています。消化器系・炎症性疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、ワクチンといった主要な疾患領域および事業分野において、革新的な医薬品の創出に向けて取り組んでいます。パートナーとともに、強固かつ多様なパイプラインを構築することで新たな治療選択肢をお届けし、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。武田薬品は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。2世紀以上にわたり形作られてきた価値観に基づき、社会における存在意義(パーパス)を果たすため、約80の国と地域で活動しています。  詳細については、 https://www.takeda.com/jp/をご覧ください。

重要な注意事項

本注意事項において、「ステートメント」とは、本ステートメントに関して武田薬品工業株式会社(以下、「武田薬品」)によって説明又は配布された本書類並びに一切の口頭のプレゼンテーション、質疑応答及び書面又は口頭の資料を意味します。本ステートメント(それに関する口頭の説明及び質疑応答を含みます)は、いかなる法域においても、いかなる有価証券の購入、取得、申込み、交換、売却その他の処分の提案、案内若しくは勧誘又はいかなる投票若しくは承認の勧誘のいずれの一部を構成、表明又は形成するものではなく、またこれを行うことを意図しておりません。本ステートメントにより株式又は有価証券の募集を公に行うものではありません。米国 1933 年証券法の登録又は登録免除の要件に基づいて行うものを除き、米国において有価証券の募集は行われません。本ステートメントは、(投資、取得、処分その他の取引の検討のためではなく)情報提供のみを目的として受領者により使用されるという条件の下で(受領者に対して提供される追加情報と共に)提供されております。当該制限を遵守しなかった場合には、適用のある証券法違反となる可能性があります。

武田薬品が直接的に、又は間接的に投資している会社は別々の会社になります。本ステートメントにおいて、「武田薬品」という用語は、武田薬品及びその子会社全般を参照するものとして便宜上使われていることがあり得ます。同様に、「当社(we、us及びour)」という用語は、子会社全般又はそこで勤務する者を参照していることもあり得ます。これらの用語は、特定の会社を明らかにすることが有益な目的を与えない場合に用いられることもあり得ます。

将来に関する見通し情報

本ステートメント及び本ステートメントに関して配布された資料には、武田薬品の見積もり、予測、目標及び計画を含む武田薬品の将来の事業、将来のポジション及び業績に関する将来見通し情報、理念又は見解が含まれています。将来見通し情報は、「目標にする(targets)」、「計画する(plans)」、「信じる(believes)」、「望む(hopes)」、「継続する(continues)」、「期待する(expects)」、「めざす(aims)」、「意図する(intends)」、「確実にする(ensures)」、「だろう(will)」、「かもしれない(may)」、「すべきであろう(should)」、「であろう(would)」、「かもしれない(could)」、「予想される(anticipates)」、「見込む(estimates)」、「予想する(projects)」などの用語若しくは同様の表現又はそれらの否定表現を含むことが多いですが、それに限られるものではありません。これら将来見通し情報は、多くの重要な要因に関する前提に基づいており、実際の結果は、将来見通し情報において明示又は暗示された将来の結果とは大きく異なる可能性があります。その重要な要因には、日本及び米国の一般的な経済条件を含む武田薬品のグローバルな事業を取り巻く経済状況、競合製品の出現と開発、世界的な医療制度改革を含む関連法規の変更、臨床的成功及び規制当局による判断とその時期の不確実性を含む新製品開発に内在する困難、新製品及び既存製品の商業的成功の不確実性、製造における困難又は遅延、金利及び為替の変動、市場で販売された製品又は候補製品の安全性又は有効性に関するクレーム又は懸念、新規コロナウイルス・パンデミックのような健康危機が、武田薬品が事業を行う国の政府を含む武田薬品とその顧客及び供給業者又は武田薬品の事業の他の側面に及ぼす影響、買収対象企業とのPMI(買収後の統合活動)の時期及び影響、武田薬品の事業にとっての非中核資産を売却する能力及びかかる資産売却のタイミング、当社による省エネルギーへの取り組み及び将来の再生可能エネルギー又は低炭素エネルギー技術の発展による当社の温室効果ガス排出量の削減の程度、武田薬品のウェブサイト(https://www.takeda.com/jp/investors/sec-filings/)又はwww.sec.govGo to https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1395064/000139506419000005/0001395064-19-000005-index.htmにおいて閲覧可能な米国証券取引委員会に提出したForm 20-Fによる最新の年次報告書並びに武田薬品の他の報告書において特定されたその他の要因が含まれます。武田薬品は、法律や証券取引所の規則により要請される場合を除き、本ステートメントに含まれる、又は武田薬品が提示するいかなる将来見通し情報を更新する義務を負うものではありません。過去の実績は将来の経営結果の指針とはならず、また、本ステートメントにおける武田薬品の経営結果及び情報は武田薬品の将来の経営結果を示すものではなく、また、その予測、予想、保証又は見積もりではありません。

医療情報

本ステートメントには、製品に関する情報が含まれておりますが、それらの製品は、すべての国で発売されているものではなく、また国によって異なる商標、効能、用量等で販売されている場合もあります。ここに記載されている情報は、開発品を含むいかなる医療用医薬品を勧誘、宣伝又は広告するものではありません。

以上

References

  1. WHO Technical Report Series No. 979, 2013 Annex 2. Guidelines on the quality, safety and efficacy of dengue tetravalent vaccines (live, attenuated). https://cdn.who.int/media/docs/default-source/biologicals/vaccine-standardization/dengue/trs-979-annex-2-dengue.pdf?sfvrsn=bd659777_2&download=trueGo to https://cdn.who.int/media/docs/default-source/biologicals/vaccine-standardization/dengue/trs-979-annex-2-dengue.pdf?sfvrsn=bd659777_2&download=true.

  2. Huang CY-H, et al. Geneticand phenotypic characterization of manufacturing seeds for tetravalent dengue vaccine (DENVax). PLoS Negl Trop Dis. 2013;7:e2243.

  3. Tricou,V, Sáez-Llorens X, et al. Safety and immunogenicity of a tetravalent dengue vaccine in children aged 2-17 years: a randomised, placebo-controlled, phase 2 trialGo to https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30556-0/fulltext.  Lancet.  2020.doi:10.1016/S0140-6736(20)30556-0.

  4. Patel et al, Clinical Safety Experience of TAK-003 for Dengue Fever: A New Tetravalent Live Attenuated Vaccine Candidate. Clin Infect Dis. 2022 May 26;ciac418.

  5. Biswal S, et al. Efficacy of a tetravalent dengue vaccine in healthy children and adolescents. N Engl J Med. 2019; 2019;381:2009-2019.

  6.  ClinicalTrials.Gov. Efficacy, Safety and Immunogenicity of Takeda’s Tetravalent Dengue Vaccine (TDV) in Healthy Children (TIDES)Go to https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02747927. Retrieved July 2023.

  7. World Health Organization. Dengue and Severe DengueGo to https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/dengue-and-severe-dengue. Published March 17, 2023.

  8. World Health Organization (WHO). Ten threats to global health in 2019Go to https://www.who.int/news-room/spotlight/ten-threats-to-global-health-in-2019. Retrieved July 2023.

  9. CDC. About Dengue: What You Need to KnowGo to https://www.cdc.gov/dengue/about/index.html. Published April 13, 2023.

  10. Guzman MG, et al. Dengue: a continuing global threat. Nature Reviews Microbiology. 2010;8:S7-S16.

  11. Reich, et al. Interactions between serotypes of dengue highlight epidemiological impact of cross-immunity. J R Soc Interface 10: 20130414. http://dx.doi.org/10.1098/rsif.2013.0414Go to http://dx.doi.org/10.1098/rsif.2013.0414.

  12. World Health Organization. Vaccines and immunizationGo to https://www.who.int/health-topics/vaccines-and-immunization#tab=tab_1. October 2022. Retrieved July 2023.