世界睡眠学会「World Sleep 2025」におけるナルコレプシータイプ1を対象とした 画期的なoveporexton(TAK-861)の第3相臨床試験プログラムのデータ発表について | 武田薬品
世界睡眠学会「World Sleep 2025」におけるナルコレプシータイプ1を対象とした 画期的なoveporexton(TAK-861)の第3相臨床試験プログラムのデータ発表について
- 当社はオレキシンサイエンスのリーディングカンパニーであり、2025年度から世界各国での承認申請に向け順調に進捗
- 主要な第3相臨床試験結果に基づく4演題のoveporexton関連の口頭発表で、ナルコレプシータイプ1の種々の症状において統計的に有意かつ臨床的に意義ある改善が報告され、治療の新たな時代となる可能性を示す
- oveporextonの忍容性は概ね良好であり、安全性プロファイルはこれまでの臨床試験と同様
当社は、ナルコレプシータイプ1(NT1)を対象とした、ファースト・イン・クラスとなる可能性を持つ経口オレキシン2受容体(OX2R)選択的作動薬であるoveporexton(TAK-861)の2つの国際共同第3相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床試験のデータ1について、本日午後3時15分(シンガポール時間)より、シンガポールで開催される世界睡眠学会「World Sleep 2025」(以下、本学会)において複数の口頭発表を行うことをお知らせします。
FirstLight(TAK-861-3001)とRadiantLight(TAK-861-3002)の両試験ともに、NT1の幅広い症状に該当するすべての主要評価項目および副次評価項目においてプラセボと比較して統計学的に有意な改善が示されており、12週時点では、すべての用量群(1mg1日2回/2mg1日2回)でp値は<0.001でした。oveporextonの忍容性は概ね良好であり、安全性プロファイルはこれまでの臨床試験と同様でした。治験薬と関連のある重篤な有害事象の報告はありませんでした。主な有害事象は不眠、尿意切迫および頻尿でした。
NT1は、脳内のオレキシンニューロンが減少することで引き起こされる慢性かつまれな神経疾患であり、それにともなう様々な症状は日常生活に支障をきたす症状を引き起こします。現在、利用可能な標準治療は、患者さんが直面する症状の一部にしか対処できていない可能性があります。オレキシン作動薬であるoveporextonは、NT1を引き起こすオレキシンの欠乏に対処することにより、NT1の広範な症状を改善するように設計されています。
FirstLight第3相臨床試験の治験責任医師であり、発表著者の1人であるEmmanuel Mignot博士(M.D., Ph.D.)は、「私たちの研究では、オレキシン欠乏がNT1の原因であり、日中の過度の眠気や情動脱力発作(カタプレキシー)などの症状を引き起こすことが示されています。OX2Rを標的とする武田薬品の革新的な努力により、oveporextonの第3相臨床試験で良好な結果が得られました。これにより、NT1の根底にある原因に対処する初のオレキシン治療に大きく近づき、現在の治療パラダイムを変革する可能性があります」と述べています。
oveporextonは当社の研究所で発見されました。第3相臨床試験であるoveporextonプログラムは、NT1を対象とした最大規模で最も包括的な開発プログラムの1つです。これらの試験では、19カ国から273例の患者さんを対象に、12週間にわたり14の主要評価項目および副次評価項目を検討しました。これらの試験を完了した被験者の95%以上が実施中の長期継続投与(Long-Term Extension, LTE)試験に組み入れられました。
本学会での口頭発表には、覚醒度に対する客観的評価および患者報告による主観的評価の他、カタプレキシー、症状の重症度および生活の質を含む以下のデータが含まれます2,3,4,5。
• 覚醒:oveporextonは日中の過度の眠気(Excessive Daytime Sleepiness, EDS)を改善し、12週時点の覚醒維持検査(Maintenance of Wakefulness Test, MWT)による平均睡眠潜時およびエプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale, ESS)スコアのベースラインからの変化が、すべての用量群でプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善を示しました。2mg1日2回投与群の被験者の大多数が、MWTで正常範囲内(≥20分)とされる覚醒を達成し、被験者の85%近くが健常者と同程度のESSスコア(≤10)を達成しました。
• カタプレキシー:oveporexton群の1週間あたりのカタプレキシー発現率(Weekly Cataplexy Rate, WCR)は、12週にわたり、すべての用量群でプラセボ群と比較して有意に低下しました(ベースラインからの変化率の中央値は80%超)。カタプレキシーが発現しない日の頻度をプラセボ群と比較した検討では、中央値でベースラインでは週あたり0日であったのが、12週時点で週あたり4〜5日にまで改善しました。カタプレキシーはNT1の特徴的な症状であり、強い感情によって引き起こされる筋緊張の突然の喪失です。
• 症状の重症度:oveporextonは、プラセボ群と比較して、ナルコレプシー重症度尺度(narcolepsy severity scale, NSS-CT)の総スコアにおいて、ベースラインから統計学的に有意な変化を示し、すべての用量群で70%を超える被験者が最も低い重症度(軽度、スコア0〜14)を示しました。また、種々のナルコレプシー症状に対する患者の全体的な自己評価となるPatient Global Impression of Change(PGI-C)スコアでは、統計学的に有意な改善が認められ、投与を受けたほぼすべての被験者(97%)において改善が報告されました。
• 生活の質:SF-36(Short Form-36-item)による生活の質の評価において、oveporextonは統計学的に有意な改善をもたらし、スコアは正常範囲とされるレベルにまで達しました。これらの結果は、EQ-5D-5L (EuroQol 5-Dimension 5-Level)を含む探索的評価項目の顕著な改善によって裏付けられています。
• 安全性プロファイル:いずれの試験でも、oveporextonの忍容性は概ね良好でした。治験薬と関連のある重篤な有害事象の報告はありませんでした。過去の臨床試験で得られた結果と同様に、最も多く認められた有害事象は不眠、尿意切迫および頻尿でした。ほとんどの有害事象は軽度から中等度でした。
当社のニューロサイエンス疾患領域ユニットヘッド兼グローバル開発ヘッドであるサラ・シーク(MD, M.Sc., B.M., B.Ch, MRCP)は、「当社はオレキシンのサイエンスと医薬品開発におけるリーダーシップを活かし、規制当局と協力してoveporextonを患者さんに迅速にお届けすることを目指しています。本学会でこの革新的な結果をお伝えできることを大変嬉しく思います。この結果は、患者さんにとって重要となる複数の治療指標で確認されており、治療の新たな時代の可能性を示すものです」と述べています。
本学会では、口頭およびポスターセッションで、NT1患者さんに対するスティグマの影響、より正確なNT1診断のための睡眠アルゴリズムおよびオレキシンバイオマーカーの評価、患者さんの治療満足度調査、認知機能、マイクロスリープ、日中の入眠症状に対する影響等、oveporexton 第2b相臨床試験からの追加解析結果の発表も行う予定です。
第3相臨床試験の結果が、2026年3月31日に終了する会計年度(2025年度)の通期連結業績予想に与える影響は軽微です。
投資家向けカンファレンスコールおよびウェブキャストの詳細について
当社は、本日9月8日午後8:30~9:45(日本時間)/午後7:30~8:45(シンガポール時間)/午前7:30~8:45(米国東部標準時間)に、oveporextonの第3相臨床試験データおよび市場機会について説明会を開催します。プレゼンテーション用のスライドとウェブキャストの登録リンクはこちらからご利用いただけます。イベント終了後、オンデマンドの再放送が当社ウェブサイトにて視聴可能となります。
oveporexton(TAK-861)について
oveporexton(TAK-861)はOX2R選択的作動薬として開発中であり、OX2Rを選択的に刺激してシグナル伝達を回復させ、NT1を引き起こすオレキシン欠乏に対処します。OX2Rを活性化することにより、覚醒を促進し、カタプレキシーや、異常な急速眼球運動(Rapid Eye Movement, REM)睡眠関連の症状を軽減して、日中および夜間の広範な症状に対処するように設計されています。
FirstLightおよびRadiantLight第3相臨床試験について
FirstLight(TAK-861-3001;NCT06470828)およびRadiantLight(TAK-861-3002;NCT06505031)は、NT1患者さんを対象に、12週間にわたりoveporextonの有効性、安全性および忍容性をプラセボと比較評価する国際、多施設共同、プラセボ対照試験です。これらの試験は19カ国で実施され、登録は6カ月以内に完了しました。FirstLight試験には168例が登録され、3つの投与群(1日2回2mg群、1mg群およびプラセボ群)のいずれかに無作為に割り付けられました。RadiantLight試験には105例が登録され、2つの投与群(1日2回2mg群およびプラセボ群)に無作為に割り付けられました。両試験の主要評価項目は、覚醒の標準的な指標である覚醒維持検査(Maintenance of Wakefulness Test, MWT)で測定したEDSの改善でした。主な副次評価項目は、エプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale, ESS)で評価したEDSおよびカタプレキシーの評価指標である1週間あたりのカタプレキシー発現率(Weekly Cataplexy Rate, WCR)の改善でした。また、これらの試験では、被験者の持続的注意力、被験者の全般的な生活の質、ナルコレプシー症状の範囲および日常生活機能に対するoveporextonの影響、ならびにoveporextonの安全性および忍容性も評価しました。
武田薬品のオレキシンフランチャイズについて
当社は、様々なオレキシン疾患に最適化されたプロファイルを持つ、前臨床および臨床段階のオレキシンフランチャイズを有する、オレキシンサイエンスのリーダーです。オレキシンは、睡眠・覚醒パターンの重要な調節因子であり、注意、気分、代謝および呼吸を含むその他の重要な機能に関与しています。oveporexton(TAK-861)は、当社のオレキシンフランチャイズにおけるOX2R作動薬のリードプログラムであり、米国食品医薬品局および中国国家医薬品監督管理局からNT1における日中の過度の眠気の治療に対するブレークスルーセラピーの指定を受けています。当社は、オレキシン神経ペプチドの濃度が正常範囲内の患者集団を対象とした他のオレキシン作動薬についても開発を進めており、経口OX2R作動薬であるTAK-360は現在、第2相臨床試験にてナルコレプシータイプ2(NT2)および特発性過眠症(IH)の治療薬として開発中です。また、オレキシンシグナルの伝達が関与する可能性のある他の適応症についても検討されています。さらに、前臨床段階のアセットとしてTAK-495の開発も進められており、2025年度中に臨床試験入りする予定です。
武田薬品について
武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献することを目指しています。消化器系・炎症性疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、ワクチンといった主要な疾患領域および事業分野において、革新的な医薬品の創出に向けて取り組んでいます。パートナーとともに、強固かつ多様なパイプラインを構築することで新たな治療選択肢をお届けし、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。武田薬品は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。2世紀以上にわたり形作られてきた価値観に基づき、社会における存在意義(パーパス)を果たすため、約80の国と地域で活動しています。 詳細については、https://www.takeda.com/jp/ をご覧ください。
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医療情報
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参照資料
- これら試験のトップライン結果については、2025年7月14日付け「ナルコレプシータイプ1を対象としたoveporexton(TAK-861)の2つの重要な第3相臨床試験における良好なトップライン結果について」において公表しています。
- Mignot E, Arnulf I, Plazzi G, et al. Efficacy and safety of Oveporexton (TAK-861), an oral orexin receptor 2 agonist for the treatment of narcolepsy type 1: results from a phase 3 randomized study in Europe, Japan, and North America. Presented at: World Sleep Congress 2025; 2025 Sep 8; Singapore.
- Dauvilliers Y, Antczak J, Buntinx E, et al. Efficacy and safety of Oveporexton (TAK-861) for the treatment of narcolepsy type 1: results from a phase 3 randomized study in Asia, Australia, and Europe. Presented at: World Sleep Congress 2025; 2025 Sep 8; Singapore.
- Sivam S, Hsiao S, Du Y, et al. Effect of the Oral Orexin Receptor 2 Agonist Oveporexton (TAK-861) on Quality of Life in Individuals with NT1 over 21 weeks. Presented at: World Sleep Congress 2025; 2025 Sep 8; Singapore.
- Barateau L, Arnulf I, Dauvilliers, Y, et al. Effect of Oral Orexin Receptor 2 Agonist Oveporexton (TAK-861) on the Severity of Symptoms in Individuals With Narcolepsy Type 1: Results From Two Phase 3 Studies. Presented at: World Sleep Congress 2025; 2025 Sep 8; Singapore.