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慢性回腸嚢炎患者さんを対象としたベドリズマブの臨床第4相試験結果のNew England Journal of Medicine掲載について

慢性回腸嚢炎患者さんを対象としたベドリズマブの臨床第4相試験結果のNew England Journal of Medicine掲載について


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March 31, 2023

- 臨床第4相EARNEST試験で、有効性の主要評価項目である14週時点における慢性または再発性回腸嚢炎の寛解を達成。寛解率はプラセボ投与群の10%に対してベドリズマブ投与群では31%1

- 34週時点でのプラセボに対する優越性も実証。寛解率はプラセボ投与群の18%に対してベドリズマブ投与群では35%1

当社は、このたび、慢性回腸嚢炎の治療薬としてのベドリズマブの臨床第4相EARNEST試験の良好な結果が、New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されましたのでお知らせします。NEJMの論文の表題は、“Vedolizumab for the Treatment of Chronic Pouchitis”(慢性回腸嚢炎の治療薬としてのベドリズマブ)です。

 

潰瘍性大腸炎(UC)の患者さんにとって治癒の可能性のある手術選択肢は、大腸全摘術と、それに続く排便機能を保持するための回腸嚢の作製(IPAA)です。回腸嚢の炎症である回腸嚢炎は、便失禁、腹部不快感および出血を生じさせる可能性があります2。慢性回腸嚢炎(症状の持続期間が4週間超と定義)はこれらの患者さんの最大5分の1に発生する可能性があります3

 

今回公表した結果では、臨床第4相EARNEST試験がmodified Pouchitis Disease Activity Index(mPDAI)を用いた臨床的および内視鏡的寛解である有効性の主要評価項目を達成し、14週時点において、プラセボ投与群では10%(51名中5名)に対して、ベドリズマブ投与群では31%(51名中16名)であったことが示されました(95%信頼区間:5-38パーセンテージポイント[p.p.]差、p=0.01)。プラセボとの比較におけるこのような転帰の改善は、34週時点における有効性の副次評価項目でも認められました(mPDAIによる寛解達成率はプラセボ投与群では18%[51名中9名]に対して、ベドリズマブ投与群では35%[51名中18名]でした[95%信頼区間:0-35 p.p.差])1

 

オックスフォード大学のTranslational Gastroenterology UnitおよびKennedy Instituteのサイモン・トラヴィス教授は「回腸嚢炎は潰瘍性大腸炎患者さんの回腸嚢手術後に比較的よくみられます。この炎症性疾患に対する生物学的な治療薬の有効性を示すことは、抗菌剤の効果が得られなくなり、これまで治療選択肢がなかった方々にとって重要です」と述べています。

 

mPDAIによる寛解以外にも、ベドリズマブ投与群は14週時点および34週時点においてプラセボ投与群を上回る臨床的な改善を示し、14週時点の差は30 p.p.(95%信頼区間:8-48)、34週時点の差は22 p.p.(95%信頼区間:2-40)でした。重篤な有害事象は、ベドリズマブ群の6%(51名中3名)、プラセボ群の8%(51名中4名)で発生しました1。安全性に関して新たなシグナルはみられませんでした。本論文では、ベドリズマブがプラセボよりも潰瘍性大腸炎患者さんのIPAA後の慢性回腸嚢炎の寛解誘導に有効であることが示されました。

 

当社のグローバル メディカル アフェアーズ部門のヴァイス・プレジデントであり、消化器系疾患領域のヘッドであるマルセロ・フレイレ(Marcelo Freire)は「当社は活動性の慢性回腸嚢炎など炎症性消化器疾患と共に生きる患者さんの治療とケアを前進させることに取り組んでいます。New England Journal of MedicineにEARNEST試験の最新の結果が公表されたことで、この疾患による患者さんの負担を減らすための当社の取り組みが広く認められることになります」と述べています。

 

ベドリズマブは欧州連合(EU)においてのみ、潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術および回腸嚢肛門吻合術(IPAA)を受け、抗菌剤治療で効果不十分または効果減弱がみられた中等症から重症の活動性の慢性回腸嚢炎の成人患者さんの治療に適応とされています4

 

米国において、ベドリズマブは中等症から重症の活動性の潰瘍性大腸炎およびクローン病(CD)の成人患者さんの治療に適応とされています5

<回腸嚢炎について>

潰瘍性大腸炎の患者さんは、結腸および直腸の切除(大腸全摘術)と排便機能を保持するために手術による回腸嚢の作製(回腸嚢肛門吻合術またはIPAA)を必要とすることがあります。新たな回腸嚢の内膜で炎症や刺激が認められる回腸嚢炎は、回腸嚢肛門吻合術の最もよくみられる合併症であり、UCもしくは家族性大腸腺腫症(FAP)患者さんの約50%が罹患します3。急性回腸嚢炎は抗菌剤治療に効果を示すことがありますが、抗菌剤療法で効果が得られず、頻繁に再燃する難治性回腸嚢炎を含めて、欧州において活動性の回腸嚢炎に対する承認されている薬物療法は現在ありません3。難治性回腸嚢炎は回腸嚢炎の患者さんの10~15%が罹患し、QOLに多大な影響をおよぼし、便意切迫感、失禁、排便時のいきみ、出血、腹部または骨盤不快感、発熱、倦怠感を生じさせる可能性があります2,6,7

 

回腸嚢炎の有病率は米国においては10万人当たり12~18人になると推計されています8

 

<EARNEST臨床試験について>

EARNEST試験は、大腸全摘術および回腸嚢肛門吻合術を受け、活動性の慢性回腸嚢炎を発症し、抗菌剤治療法に対し効果不十分または効果が得られない潰瘍性大腸炎の成人患者さんを対象に、ベドリズマブ点滴静注製剤の有効性および安全性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験です9

 

<ベドリズマブについて>

ベドリズマブは消化管に選択的に作用する生物学的製剤であり、米国では点滴静注製剤(IV)が承認されており、欧州、カナダ、オーストラリア、スイス、日本では、IVおよび皮下注射製剤(SC)が承認されています4,5,10,11,12,13。本剤はα4β7インテグリンと特異的に拮抗し、α4β7インテグリンの腸粘膜アドレシン細胞接着分子-1(MAdCAM-1)への結合を阻害しますが、血管細胞接着分子1(VCAM-1)への結合は阻害しないようデザインされた、ヒト化モノクローナル抗体です14。MAdCAM-1は消化管の血管およびリンパ節に選択的に発現しています15。一方、α4β7インテグリンは循環血液中の白血球サブセットに発現しています14。これらの細胞は、潰瘍性大腸炎とクローン病における炎症プロセスを調節するうえで重要な役割を果たしていることが明らかになっています14,16,17。α4β7インテグリンを阻害することで、ベドリズマブはある種の白血球細胞が消化管組織へ浸潤することを抑制できる可能性があります14

 

ベドリズマブ製剤は、標準療法または抗TNFα抗体による治療のいずれかに対し効果不十分、効果減弱、または不耐性である中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎およびクローン病の成人患者さんに対する治療薬として承認されています4,5。ベドリズマブは米国とEUを含む70を超える国で製造販売承認を取得しており、これまでの累計使用患者さんの数は100万人・年以上です18

 

<武田薬品について>

武田薬品工業株式会社(TSE: 4502/NYSE: TAK)は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。研究開発において、オンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤とワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(治療手段)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80の国と地域で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるように活動しています。詳細についてはhttps://www.takeda.com/jp/をご覧ください。

 

<重要な注意事項>

本注意事項において、「ニュースリリース」とは、本ニュースリリースに関して武田薬品工業株式会社(以下、「武田薬品」)によって説明又は配布された本書類並びに一切の口頭のプレゼンテーション、質疑応答及び書面又は口頭の資料を意味します。本ニュースリリース(それに関する口頭の説明及び質疑応答を含みます)は、いかなる法域においても、いかなる有価証券の購入、取得、申込み、交換、売却その他の処分の提案、案内若しくは勧誘又はいかなる投票若しくは承認の勧誘のいずれの一部を構成、表明又は形成するものではなく、またこれを行うことを意図しておりません。本ニュースリリースにより株式又は有価証券の募集を公に行うものではありません。米国 1933 年証券法の登録又は登録免除の要件に基づいて行うものを除き、米国において有価証券の募集は行われません。本ニュースリリースは、(投資、取得、処分その他の取引の検討のためではなく)情報提供のみを目的として受領者により使用されるという条件の下で(受領者に対して提供される追加情報と共に)提供されております。当該制限を遵守しなかった場合には、適用のある証券法違反となる可能性があります。

 

武田薬品が直接的に、又は間接的に投資している会社は別々の会社になります。本ニュースリリースにおいて、「武田薬品」という用語は、武田薬品及びその子会社全般を参照するものとして便宜上使われていることがあり得ます。同様に、「当社(we、us及びour)」という用語は、子会社全般又はそこで勤務する者を参照していることもあり得ます。これらの用語は、特定の会社を明らかにすることが有益な目的を与えない場合に用いられることもあり得ます。

 

<将来に関する見通し情報>

本ニュースリリース及び本ニュースリリースに関して配布された資料には、武田薬品の見積もり、予測、目標及び計画を含む武田薬品の将来の事業、将来のポジション及び業績に関する将来見通し情報、理念又は見解が含まれています。将来見通し情報は、「目標にする(targets)」、「計画する(plans)」、「信じる(believes)」、「望む(hopes)」、「継続する(continues)」、「期待する(expects)」、「めざす(aims)」、「意図する(intends)」、「確実にする(ensures)」、「だろう(will)」、「かもしれない(may)」、「すべきであろう(should)」、「であろう(would)」、「かもしれない(could)」、「予想される(anticipates)」、「見込む(estimates)」、「予想する(projects)」などの用語若しくは同様の表現又はそれらの否定表現を含むことが多いですが、それに限られるものではありません。これら将来見通し情報は、多くの重要な要因に関する前提に基づいており、実際の結果は、将来見通し情報において明示又は暗示された将来の結果とは大きく異なる可能性があります。その重要な要因には、日本及び米国の一般的な経済条件を含む武田薬品のグローバルな事業を取り巻く経済状況、競合製品の出現と開発、世界的な医療制度改革を含む関連法規の変更、臨床的成功及び規制当局による判断とその時期の不確実性を含む新製品開発に内在する困難、新製品及び既存製品の商業的成功の不確実性、製造における困難又は遅延、金利及び為替の変動、市場で販売された製品又は候補製品の安全性又は有効性に関するクレーム又は懸念、新規コロナウイルス・パンデミックのような健康危機が、武田薬品が事業を行う国の政府を含む武田薬品とその顧客及び供給業者又は武田薬品の事業の他の側面に及ぼす影響、買収対象企業とのPMI(買収後の統合活動)の時期及び影響、武田薬品の事業にとっての非中核資産を売却する能力及びかかる資産売却のタイミング、当社による省エネルギーへの取り組み及び将来の再生可能エネルギー又は低炭素エネルギー技術の発展による当社の温室効果ガス排出量の削減の程度、武田薬品のウェブサイト(https://www.takeda.com/jp/investors/sec-filings/)又はwww.sec.govにおいて閲覧可能な米国証券取引委員会に提出したForm 20-Fによる最新の年次報告書並びに武田薬品の他の報告書において特定されたその他の要因が含まれます。武田薬品は、法律や証券取引所の規則により要請される場合を除き、本ニュースリリースに含まれる、又は武田薬品が提示するいかなる将来見通し情報を更新する義務を負うものではありません。過去の実績は将来の経営結果の指針とはならず、また、本ニュースリリースにおける武田薬品の経営結果及び情報は武田薬品の将来の経営結果を示すものではなく、また、その予測、予想、保証又は見積もりではありません。

 

医療情報

本ニュースリリースには、製品に関する情報が含まれておりますが、それらの製品は、すべての国で発売されているものではなく、また国によって異なる商標、効能、用量等で販売されている場合もあります。ここに記載されている情報は、開発品を含むいかなる医療用医薬品を勧誘、宣伝又は広告するものではありません。

 

References
  1. Travis S, Silverberg MS, Danese S, et al. Vedolizumab for the Treatment of Chronic Pouchitis. N Engl J Med. 2023; 388:1191-1200

  2. Schieffer KM, Williams ED, Yochum GS, et al. Review article: the pathogenesis of pouchitis. Aliment Pharmacol Ther. 2016;44:817–835.

  3. Dalal RL, Shen B, Schwartz DA. Management of Pouchitis and Other Common Complications of the Pouch. Inflamm Bowel Dis. 2018;24:989-996.

  4. Entyvio Summary of Product Characteristics. Available at: https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/entyvio-epar-product-information_en.pdf. Last updated: October 2022. Last accessed: February 2023.

  5. Entyvio Prescribing Information. Available at: https://general.takedapharm.com/ENTYVIOPI. Last updated: June 2022. Last accessed: March 2023.

  6. Singh A, Khan F, Lopez R, et al. Vedolizumab for chronic antibiotic-refractory pouchitis. Gastroenterol Rep (Oxf). 2019;7:121-126.

  7. Bär F, Kühbacher T, Dietrich NA, et al. Vedolizumab in the treatment of chronic, antibiotic-dependent or refractory pouchitis. Aliment Pharmacol Ther. 2018;47:581-587.

  8. Sandborn WJ, Pardi DS. Clinical management of pouchitis. Gastroenterology. 2004;127(6):1809–1814.

  9. A Study to Evaluate the Efficacy and Safety of Vedolizumab in the Treatment of Chronic Pouchitis (EARNEST). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02790138. Last updated: February 2022. Last accessed: March 2023.

  10. Product Monograph including Patient Medication Information. Available at: https://assets-dam.takeda.com/raw/upload/v1662721781/legacy-dotcom/siteassets/en-ca/home/what-we-do/our-medicines/product-monographs/entyvio/ENTYVIO-PM-EN.pdf Last accessed: March 2023

  11. Australian Product Information. Entyvio (vedolizumab). Available at: https://www.guildlink.com.au/gc/ws/tk/pi.cfm?product=tkpentyv11118#:~:text=The%20recommended%20dose%20regimen%20of,a%20dose%20at%20Week%2010. Last accessed: March 2023

  12. Fachinformation Entyvio. Swissmedic. October 2020.

  13. Takeda Receives Approval to Manufacture and Market Entyvio Subcutaneous Injection in Japan for the Maintenance Treatment of Moderate to Severe Ulcerative Colitis. Available at: https://www.takeda.com/newsroom/newsreleases/2023/approval-to-manufacture-and-market-entyvio Last accessed: March 2023

  14. Soler D, Chapman T, Yang LL, et al. The binding specificity and selective antagonism of vedolizumab, an anti-alpha4beta7 integrin therapeutic antibody in development for inflammatory bowel diseases. J Pharmacol Exp Ther. 2009;330:864-875.

  15. Briskin M, Winsor-Hines D, Shyjan A, et al. Human mucosal addressin cell adhesion molecule-1 is preferentially expressed in intestinal tract and associated lymphoid tissue. Am J Pathol. 1997;151:97 110.

  16. Eksteen B, Liaskou E, Adams DH. Lymphocyte homing and its role in the pathogenesis of IBD. Inflamm Bowel Dis. 2008;14:1298 1312.

  17. Wyant T, Fedyk E, Abhyankar B. An overview of the mechanism of action of the monoclonal antibody vedolizumab. J Crohns Colitis. 2016;10:1437-1444.

  18. Takeda data on file (VV-SUP-116025): Vedolizumab Patient Exposure from Marketing Experience. July 2022.