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サイトメガロウイルス(CMV)感染治療におけるTAK-620(一般名:maribavir)の臨床第2相試験結果がNew England Journal of Medicineに掲載

サイトメガロウイルス(CMV)感染治療におけるTAK-620(一般名:maribavir)の臨床第2相試験結果がNew England Journal of Medicineに掲載


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September 25, 2019

- CMV感染は移植患者において致命的な合併症になり得るが、臨床第2相試験結果よりCMV酵素特異的に作用するmaribavirのCMV 陽性細胞低下効果が示唆
- 2つのグローバル臨床第3相試験において被験者を組み入れ中

 

当社は、このたび、経口投与可能な抗ウイルス性化合物であるTAK-620(一般名:maribavir)の臨床第2相試験結果がNew England Journal of Medicineに掲載されましたのでお知らせします。当試験は、造血幹細胞移植または固形臓器移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染患者を対象とし、無作為化、非盲検で12週間実施されました。CMVはベータヘルペスウイルスであり、臓器または幹細胞の移植者を含む免疫力が低下した患者では、死亡する可能性のある臨床的に対処が難しい合併症を引き起こします。

maribavirは、特定のCMV蛋白が標的となるように設計されており、CMV DNAの複製およびカプシド形成の阻害、ならびに感染細胞核からのウイルスカプシド放出を抑制する可能性があります。CMV UL97プロテインキナーゼを阻害することにより、maribavirは、ウイルスDNA合成、ウイルス遺伝子発現、カプシド形成、細胞核からの成熟カプシド放出など、CMV複製における複数のプロセスに影響を及ぼす可能性があります。

臨床第2相試験は、造血細胞移植または固形臓器移植を受けている18歳以上の患者159例を対象とした無作為化、12週間、非盲検試験であり、maribavir[400㎎(40例)、800mg(40例)または1,200mg(39例)いずれかを1日2回投与]とバルガンシクロビル[1週目~3週目に900 mgを1日2回、3週目以降に900 mgを1日1回(40例)]の安全性および忍容性の評価を目的としました。

主要な有効性評価項目は、中央検査機関で確認された血漿中CMV DNAが検出されなかった反応例の割合です。投与3週までの結果では、maribavirのいずれかの用量群に割り付けられた患者の62%において有効性がみとめられ、バルガンシクロビル群では56%でした(リスク比:1.12, 95%CI 0.84-1.49)。投与6週までの反応例の割合は、maribavir群およびバルガンシクロビル群でそれぞれ79%および67%でした(リスク比:1.20, 95%CI 0.95-1.51)。
臨床第2相試験では、maribavirが、造血細胞または固形臓器移植後のCMV感染、または血中CMVの活発な増殖に対する治療として抗ウイルス活性を示すことが報告されました。

安全性および忍容性に関して、少なくとも1回治験薬を投与された後に発現し、治療に関連ありと判断された有害事象(TEAE)は、バルガンシクロビルを投与された患者の22%に対して、いずれかのmaribavirを投与された患者では67%に認められました。バルガンシクロビル群(42.5%)に対しmaribavir群でみられたほとんどのTEAE(58%)は、重症度が軽度から中程度と判断されました。maribavir群で最もよくみられたTEAEは、味覚異常または味覚の変化(40%)でした(バルガンシクロビル群2%)。既報の結果同様に、バルガンシクロビル群と比較して、maribavir群では胃腸に関する有害事象の発現増加と関連がありました(maribavir群:20~23%、バルガンシクロビル群:10~15%)。maribavir群でよくみられた重篤な有害事象(SAE)は、急性移植片対宿主病、下痢、腎不全および尿路感染で、maribavirを投与された患者の3%においてそれぞれみられました。一方、バルガンシクロビル群で、8%に細菌性敗血症がみられました。治療に関連した重篤な有害事象は、maribavir群で10%、バルガンシクロビル群で2%にみられました。

投与6週目までの結果においては、バルガンシクロビル群で15%、maribavir群で4%の患者において好中球減少症がみられました。また、投与12週目までの結果においては、バルガンシクロビル群で18%、maribavir群で5%の患者において好中球減少症がみられました。好中球減少症は、白血球の一種である好中球が非常に少ない場合に発現し、移植後において移植患者にみられる合併症です。好中球減少症は、生命にかかわる細菌や真菌の感染など、重篤な移植後合併症のリスクを増大する可能性があり、固形臓器移植患者では臓器の拒絶反応と関連します。maribavir群において、骨髄抑制または腎機能障害による投与中止はみられませんでした。

当試験の治験責任医師であり筆頭著者であるベルギー ルーヴェンのZiekenhuizen Leuven大学のJohan Maertens博士は、「CMV感染を有する移植後の患者、特に、現在利用可能な抗ウイルス療法に耐性のあるCMV感染を有する患者においては、さらなる治療に対する非常に大きなアンメットニーズがあります。今回の試験結果は、非常に有望なものであり、移植患者におけるCMVに対して、有効性ならびに忍容性の可能性を示す治療法として、Maribavirを精査するべきと指し示しています」と述べています。

maribavirは、欧州委員会から、細胞性免疫障害を有する患者のCMV疾患の治療薬として、また米国食品医薬品局(FDA)から、臨床的に重篤なサイトメガロウイルス血症および疾患リスクの高い患者の治療薬として希少疾病用医薬品指定を受けています。希少かつ生命にかかわる疾患の治療または予防を目的とした特定の治験薬は、希少疾病用医薬品として指定を受けます。FDAは、サイトメガロウイルス感染および疾患を有し、既存の治療に抵抗性を有するまたは難治性の移植患者への治療薬として、maribavirのBreakthrough Therapy指定を行っています。Breakthrough Therapy指定により、重篤な疾患に対して既存の治療法よりも大幅な改善を示す可能性のある臨床データを有する治験薬の開発ならびに評価が推進されます。Breakthrough Therapy指定は、FDAが移植患者におけるCMV感染治療薬としてmaribavirを承認することを保証するものではなく、承認時期は未定です。

当社 Rare Diseases Therapeutic Area UnitのHeadであるDaniel Curranは、「当試験結果に基づき、2つのグローバル臨床第3相試験において、移植後CMV感染を対象にmaribavirを評価しています。maribavirを今後も開発していくことは、当社の臨床後期における希少疾患パイプラインの進展と、非常に大きなアンメットニーズがあるCMVのような疾患を有する患者さんに革新的な医薬品をお届けするという弊社の強い思いを表しています」と述べています。

移植患者のCMV感染治療を目的にmaribavirを評価する2つの無作為化臨床第3相試験は、現在被験者を募集中です。1つは非盲検の優越性を評価する試験であり、抵抗性または難治性CMV感染またはCMV感染症を有する造血細胞移植または固形臓器移植患者を対象に、maribavir 400 mgを1日2回8週間投与し、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネットもしくはシドフォビルを含む治験責任医師が認めた治療法と比較します。2つ目は、CMVの最初のウイルス血症が認められている造血細胞移植患者を対象とした、maribavir 400 mgを1日2回8週間投与する二重盲検 非劣性試験です。

<臨床第2相試験について>
投与3週までの結果では、バルガンシクロビル群(56%)と比較して、maribavir投与群(62%)は、試験用量に関係なく、有効性が認められました(400 mg [67%]、800 mg [58%]、1200 mg [61%])。投与6週までの結果では、バルガンシクロビル群(67%)と比較して、maribavir群は、79%(400 mg [79%]、800 mg [83%]および1200 mg [74%])に増加しました。

maribavir群で最もよくみられたTEAEは味覚異常または味覚の変化であり、バルガンシクロビル群の2%と比較し、maribavir群では40%の患者において報告されました。最もよくみられた重篤な有害事象は、急性移植片対宿主病、下痢、腎不全および尿路感染であり、いずれもmaribavir群の3%においてみられました。バルガンシクロビル群では、重篤な有害事象である細菌性敗血症が患者の8%においてみられました。有害事象により治験薬投与が一部中止された症例は、maribavir群で23%、バルガンシクロビル群で12%みられました。maribavir群において最もよくみられた投与中止理由は、CMV感染(5%)でしたが、腎障害または骨髄抑制による中止はみられませんでした。バルガンシクロビル群において最もよくみられた投与中止理由は白血球減少症でした(5%)。有害事象による投与量の調整は、バルガンシクロビル群(48%)と比較し、maribavir群では8%でした。

臨床第2相試験の結果は、2016年に開催されたInfectious Disease Week(ID Week)で初めて発表されました。


<武田薬品について>
武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、日本に本社を置き、自らの経営の基本精神に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。武田薬品のミッションは、優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献することです。研究開発においては、オンコロジー(がん)、消化器系疾患、希少疾患およびニューロサイエンス(神経精神疾患)の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤およびワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80の国および地域で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。
詳細については、https://www.takeda.com/jp/をご覧ください。

以上