医療制度を強化するために| 武田薬品
医療制度を強化するために
治療薬やワクチンを持続的かつ公平に届けるためには、患者さんのニーズと、それに応える地域の医療制度の能力をともに深く理解することが不可欠です。
私たちは、グローバルの知見を活用しつつ現地発信のアプローチを取り入れることで、医療制度を強化するための包括的なアプローチを進めています。
このアプローチの中心にあるのは、政府や非政府団体との協働です。私たちは協働を通じて取り組みを持続可能なものとし、その成果をより広く、長期的に社会にもたらすことを目指しています。
ここでは、患者さんが必要とする医薬品へのアクセスを改善し、地域社会に価値を生み出すとともに、患者さんの暮らしをより豊かにすることを目指す、当社の医療制度強化プログラムをご紹介します。
東南アジアにおける医薬品アクセスの公平性向上
東南アジアおよびインドでは、いまなお何百万人もの人々が喫緊の医療課題に直面しています。質の高い医療を手の届く価格で利用するうえで大きな障壁となっているのは、断片的な規制システム、医療インフラへの資金不足、不均衡な投資などであり、さらに非感染性疾患や感染症の増加、人口動態の変化、気候変動の影響がその困難さを一層深めています1。
それでもこの地域では、前進を示す確かな事例が数多く見られます。タイでは、全国保健大会(National Health Assembly)として知られる参加型のガバナンスモデルが、地域社会の声を政策立案に盛り込む上で一つの役割を果たし、ユニバーサルヘルスカバレッジを推進する力になっています2。インドネシアでは、カデル(地域の保健ボランティア)が予防接種から栄養支援に至るまで幅広いサービスを担い、子どもの予防接種率を87%にまで引き上げるとともに、平均寿命の延伸や母子死亡率の低下にも寄与しています3。フィリピンでは、ドローン配送プログラムによって同国でも最も遠隔地の一部にワクチンが届けられ、地域主導のイノベーションと分野横断的なパートナーシップが、医薬品アクセスにおける最も困難な障壁すら乗り越えられることを示しました 。 4
『東南アジアで医薬品アクセスの公平性を高めるために』は、タケダがスポンサーを務め、SingHealth Duke-NUS Global Health Institute、AVPN、ACCESS Health International、タケダが共同で執筆した新しいポジションペーパーです。このペーパーでは、課題と機会の双方を詳細に検討し、この地域における医薬品アクセス向上のための実践的なロードマップを提示しています。
このペーパーは、2025年2月にタイ・バンコクで開催された第1回Southeast Asia Access to Medicine Summit(タケダがスポンサーを務め、SingHealth Duke-NUS Global Health Institute、AVPN、ACCESS Health Internationalとタケダが共催)と、同年4月にインド・ニューデリーで開催されたWorld Health Summit Regional Meeting(タケダはSEAワーキンググループの一員として参加)での議論を踏まえてまとめられたものです。これらの会議には、政策立案者、産業界のリーダー、学術関係者、患者支援団体、医療従事者など幅広い分野の人々が集い、それぞれの経験を共有し、何が障壁になっているのかを特定し、実際的で持続可能なアプローチを検討していきました。
このペーパーでは、地域の強みや共有された経験に基づき、包括的で持続可能な医療制度の構築を支える変革的な戦略を検討しています。その主な内容は以下のとおりです。
- 政策立案に地域社会の声を反映させる
- 地域全体で規制制度を調和させる
- デジタルおよびデータインフラを拡充する
- 公平性と成果の向上を実現するために資金制度を改革する
- 官民パートナーシップの強化により、イノベーションを促進し、説明責任を高める
この地域では、すでに何が可能かが示されています。これからは、政府、市民社会、民間企業が力を合わせ、共通の目標を持続的な変化へとつなげ、公平な医薬品アクセスをすべての患者さんにとって当たり前のものにしていく段階です。
レポートの全文はこちらをご覧ください(英語のみ)
- Executive Summary, p. 3, and Forward, p. 6 of Advancing Equitable Access to Medicines in Southeast Asia. Southeast Asia Access to Medicine Working Group, co-authored by SingHealth Duke-NUS Global Health Institute, AVPN, ACCESS Health International, and Takeda. Sponsored by Takeda Pharmaceutical International, August 2025.
- Presented at the Southeast Asia Access to Medicine Summit; Bangkok, Thailand; 18 February 2025. – p. 14 of Advancing Equitable Access to Medicines in Southeast Asia, Southeast Asia Access to Medicine Working Group, 2025.
- CHW Central. Indonesia’s Community Health Workers (Kaders). Available at: https://chwcentral.org/indonesias-community-health-workers-kaders/
[cited March 2025] - p. 30 of Advancing Equitable Access to Medicines in Southeast Asia, Southeast Asia Access to Medicine Working Group, 2025. - WeRobotics. Locally-Led Medical Drone Delivery in the Philippines. Available at: https://www.youtube.com/watch?v=5SbiP7bSUw4 [cited March 2025] p. 19 of Advancing Equitable Access to Medicines in Southeast Asia, Southeast Asia Access to Medicine Working Group, 2025.
非感染性疾患(NCD)への資金配分のための創意工夫:国際会議
2025年5月、スイス・ジュネーブで開催された第78回世界保健総会にあわせて、NCDへの持続可能で公平な資金配分の促進をテーマとするハイレベル・ラウンドテーブルが開かれました。これは、タケダが資金面で協力し、Foreign Policy Analyticsと共催したものです。
本サマリーレポートには、政府機関、産業界、市民社会のリーダーから得られた豊富な知見と実行可能な提案がまとめられています。たとえば、NCDをユニバーサルヘルスカバレッジの枠組みに速やかに組み込む必要性、革新的な資金調達メカニズムを実現するための多分野にわたる連携の重要性、公平性とレジリエンス(逆境に負けないしなやかな強さ)を重視した地域主導のアプローチの価値などが挙げられます。このイベントを通じて私たちは、支援の行き届いていない人々のために医療制度を強化し、アウトカムを高める包括的なパートナーシップや長期的なソリューションを引き続き支援していく決意を新たにしました。
詳細は総合レポートをご覧ください。
Rx for Change: Solutions for Sustainable, Equitable, and Innovative Health Financing for NCDs
2025年9月 C-ANPROM/INT/NON/0096
東南アジアにおける希少疾患患者さんの医薬品アクセス改善への挑戦1
希少疾患は、多くの人が想像する以上に一般的で、東南アジアでは患者数が4,500万人を超えています。これは、同地域の人口のおよそ9%にあたります2。
しかし、必要な治療を受けようとしても、疾患に対する認知不足や正確な診断にたどりつくのに時間がかかるなど、数千万人規模の患者さんが大きな障壁に直面しています3。希少疾患は広く点在している一方、疾患ごとにみると患者数は少ないため、東南アジアでは治療や医薬品の提供が著しく限られているのが現状です3 。
この課題に対応するため、当社は2024年3月、専門家、政策立案者、患者支援者など約600名を招き、バンコクで第2回東南アジア希少疾患サミットを開催しました。本サミットは当社が主導し、企画・運営・資金提供を行ったものです。そこで得られた知見を基に作成したホワイトペーパーには、この地域の希少疾患患者さんが直面する主な障壁がまとめられています。詳細はホワイトペーパーの全文をご覧ください。
このサミットでは、東南アジア各地の支援グループの取り組みも紹介されました。シンガポールでは新生児向けの希少疾患スクリーニングが導入され、タイでは治療へのアクセスを改善するため紹介システムが最適化されました。台湾では希少疾患に関する政策が推進され、マレーシアでは患者支援ネットワークが設立されました。これらの事例は、医薬品アクセスの障壁の複雑さを示すとともに、改善策導入の成功要因を共有することを目的としています。
このサミットの成果とホワイトペーパーの推奨事項を受け、2024年11月、タケダはタイにおいて公衆衛生当局および患者支援団体と戦略的了解覚書(MOU)を更新しました。このMOUでは、①希少疾患への認知度向上②診断能力の強化③医療従事者の研修支援④患者さんの声を反映した政策枠組みの促進―の4点を優先事項としています。
このMOUは重要な一歩ですが、タイをはじめ東南アジア全体で希少疾患の治療を改善するためには、すべての関係者による継続的な取り組みがまだ始まったばかりであることを示しています。
- 「私たちには、政府機関、非政府組織、そして民間企業が協働し、希少疾患の課題に取り組む際のベストプラクティスを共有し、各国に即した希少疾患対策を始動させるための場が必要でした。東南アジア希少疾患サミットは、その貴重な場を提供してくれました。見過ごされる患者さんが一人もいないよう、私たちは力を合わせ、具体的な行動を起こさなければなりません」
タンヤチャイ・スラ教授(MD)、 Asia-Pacific Society of Human Genetics (APSHG) プレジデント、Medical Genetics and Genomics Association (MGGA) プレジデント
- 本記事は、健康状態や疾患の診断・治療を目的としたものではありません。医療従事者による助言や診療に代わるものでもありません。
- https://ojrd.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13023-016-0460-9
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27484654/
包括的なソリューションによるフィリピンの医療制度強化
マニラで開催された「医薬品アクセスサミット2024」で得られた知見を基に、当社はホワイトペーパーを作成しました。そこでは、患者さんが直面する現状の課題を整理するとともに、フィリピンの医療制度に組み込まれ、地域社会が主体となって進めている数々の取り組みを紹介し、持続的かつ公平に医療を届ける道筋を示しています。
フィリピンにおける持続可能で公平な医薬品アクセスへの道筋
2024年、当社はマニラで「医薬品アクセスサミット」を開催しました。このサミットには政府機関の代表者、医療専門家、NGO、患者支援団体など200名以上の関係者が参加し、フィリピンにおける革新的な医薬品への持続的かつ公平なアクセスを加速する方法を共に探りました。
その成果として、参加者により推奨ロードマップが策定されました。そこでは、フィリピンの患者さんが直面する主な医療課題が整理され、医薬品アクセス改善のための現行の取り組みが紹介されています。さらに、持続的かつ公平な医薬品アクセスを妨げる障壁を取り除く可能性をもつ今後の推奨ステップも示されています。
このロードマップのハイライト(実施に向けた最初のステップ)を以下にまとめます。
医薬品アクセスの障壁
ペイシェントジャーニー(診断や治療、継続的なケアなど、患者さんがたどる過程)には、医薬品への公平なアクセスを妨げる多くの障壁があります。フィリピンは島嶼国家であるため包括的な医療制度の整備が難しく、特に遠隔地域で課題が顕著です1 。加えて、疾患に関する誤解や不十分な患者教育2 、サプライチェーンの問題により、医薬品の安定供給や在庫管理にも支障が生じています3 。さらに、所得が向上している一方で高額な医療費は依然として多くの人々にとって大きな障壁となっています4 。
医薬品アクセス改善のための現在の取り組み
すべての国民が公平に医療を受けられるようにするうえで、フィリピンのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ法は大きな一歩となりました。同国は包括的な「8つのアクション項目」5を掲げ、医療アクセスと健康アウトカムの向上に力を注いでいます。プライマリケアセンターの新設、メンタルヘルスケアの改善、危機へのレジリエンス強化などの取り組みからも、医療分野を改革し政府の約束を着実に実現しようとする姿勢がうかがえます。
医薬品アクセスの障壁に対応するためのロードマップ
このロードマップには、地域主導で包括的かつ持続可能な医薬品アクセス改善を実現するための指針として、サミットで提案された主なアイディアが盛り込まれています。提案には、相互運用可能な電子医療記録システムの導入による患者情報の整理、医療従事者の雇用権利強化、専門医療センターやがんセンターにおける厳格な基準の設定などが含まれます。
出典
- Challenges in public health facilities and services: evidence from a geographically isolated and disadvantaged area in the Philippines
- Prevalence of Limited Health Literacy in the Philippines: First National Survey
- Inventory Management of Drugs and Medicines of Four Devolved Hospitals of the Province of Bohol for CY 2022
- Health expenses remain a big burden for Pinoys despite UHC
- Philippine Development Plan 2023-2028: Economic Transformation for a Prosperous, Inclusive, and Resilient Society
ケニアにおける非感染性疾患(NCD)への医療制度と医薬品アクセス改善
ケニアのメルー郡で、NCD患者さんの治療水準と医薬品アクセス改善に取り組むため、私たちは同国政府や現地の医療リーダーと協力し、3年間のパイロットプログラム「Blueprint for Innovative Healthcare Access」を実施しました。
ルワンダにおける医療エコシステム強化のための包括的な医薬品アクセスアプローチ
ケニアでのパイロットプログラムの成功を受け、私たちはこのアプローチをサハラ以南の他の国々にも展開しました。医薬品アクセス改善の取り組みを拡大し、その成果をペイシェントジャーニー全体に広げることを目指しており、その対象国の一つがルワンダです。