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武田薬品工業とルンドベック・ジャパン、「患者さんと医師のうつ病の症状、治療への期待、社会機能に関する共同調査研究」の結果を発表

2021年9月29日

- うつ病の症状や治療への期待に関しては、患者さんと医師の間で大きな認識の違いはみられない
- 職業評価・対人関係などの社会機能に関しては、医師が患者さんよりも低く評価する傾向がみられ

武田薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、以下「武田薬品」)と ルンドベック・ジャパン株式会社(本社:東京都港区、以下「ルンドベック・ジャパン」)は、うつ病や統合失調症など精神疾患を専門にした治験支援機関(SMO)であるCNS薬理研究所主幹であり医療法人石郷岡病院 理事長で精神科医の石郷岡 純先生とともに、うつ症状の認識と治療への期待に関する患者さんと医師の異同を検討する共同調査研究を行いました。その研究結果が去る9月10日にNeuropsychiatric Disease and Treatmentに掲載1されたほか、9月19日から21日に開催された第117回日本精神神経学会学術総会においてもその要旨を発表いたしましたのでお知らせいたします。

うつ病は、一進一退を繰り返しながら時間をかけて回復し、寛解に至っても6割2の患者さんが再発するなど、回復の判断の見極めが非常に難しい疾患です。特に現役世代では、日本企業の9.2%がメンタルヘルスの不調により休職した従業員を抱えるといわれ3、メンタルヘルスの不調を抱える患者さんの社会復帰を適切に支援することは日本社会全体にとって大きな課題となっています。長引く休業期間に焦って復帰過程で出勤して悪化したり、出勤できても仕事が手につかないプレゼンティーズム4の問題もあり、社会復帰のタイミングをどう判断するかは多角的な検討が求められています。
そこで本調査研究では、うつ病の患者さんと医師の「うつ病による現在の症状」、「改善していない症状」、「治療したい症状」、「社会機能評価」、「治療に期待すること」に関する認識の相違を理解する目的で、20歳から65歳の全国の患者さんと医師(解析対象回答828、患者さん828名、医師326名)を対象にインターネット調査を実施しました。

今回の調査結果から、本調査に回答されたうつ病の患者さんと医師において、全体として患者さんと医師の間でうつ病の症状や治療に関しての認識に大きな違いはないことがわかりました。しかし、病期によっては、「現在の症状」 「改善していない症状」「治療したい症状」に関して、患者さんと医師の間で認識の違いがあることがわかりました。また、患者さんと比べて医師では、病期にかかわらず患者さんの職業機能や対人関係といった社会機能を低く評価する傾向がみられました(詳細次ページ以降参照)。

本研究の研究代表者である石郷岡 純先生は今回の調査結果について、「病期によっては、患者さんと医師で症状、社会機能、治療に期待することにおいてやや違いが見られたが、全体として、患者さんと医師の間で大きな違いが見られませんでした。両者に違いが見られた職業評価・対人関係などの社会機能に関しては、患者さんが楽観的にとらえている、あるいは患者さんにとって症状、社会機能の回復の目標がイメージできていない可能性が示唆されました。患者さんに対してうつ病の社会機能についての知識を浸透させるための啓発、および医師においてはスムーズな社会復帰のために患者さんと医師の間で認識に差があることを理解したうえで診療に臨むことが期待されます」​と、述べています。

1 Ishigooka J et al., 2021, Neuropsychiatr Dis Treat. Patient and Physician Perspectives of Depressive Symptoms and Expectations for Treatment Outcome: Results from a Web-Based Survey
2 厚生労働省 こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト https://kokoro.mhlw.go.jp/return/return-worker/
3 厚生労働省 令和2年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r02-46-50b.html
4 経済産業省 平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業 健康経営に貢献するオフィス環境の調査事業 健康経営オフィスレポート https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf

 

◆調査結果概要

<現在の症状:各病期における現在の症状の患者と医師の認識>

気分、身体、認知症状のいずれにおいても現在の症状に対する認識に患者と医師の間で大きな差はありませんでした。 「現在の症状」について、重症期では患者さんの87%、軽症期では患者さんの66%が認知症状があると考えているのに対して、医師ではそれぞれ82%、54%であり、患者さんに比べて医師では、これらの病期では認知症状があると考えている割合が少ないことがわかりました。また、身体症状についても、軽症期の患者さんの91%が身体症状があると回答しているのに対して、医師では85%にとどまり、患者さんに比べて医師では、身体症状があると考えている割合が少ないことがわかりました。


<現在の症状(認知症状のサブ解析):各病期における現在の認知症状の患者と医師の認識>

認知症状のいずれのドメインについても患者と医師の間で認識に大きな差はありませんでした。 「現在の症状の有無」について、重症期では患者さんの35%、軽症期では患者さんの14%が集中困難の症状があると考えるのに対して、医師ではそれぞれ20%、8%と低く、患者さんに比べて医師では集中困難の症状があると考える割合が低いことがわかりました。また、軽症期において、患者さんの63%が物忘れ/記憶困難の症状があると回答しているのに対し、医師では51%で、患者さんに比べて医師は物忘れ/記憶困難の症状があるとする割合が少なくなりました。


<改善していない症状、治療したい症状>
「改善していない症状」では、軽症期と軽快期において、患者さんよりも医師は気分症状が改善していないと考えている割合が高く、また軽症期において患者さんよりも医師では認知症状が改善していないと考えている割合が高いことから、治療による症状の改善度は医師の方が低く考えていることがわかりました。

「治療したい症状」では、軽症期において、患者さんよりも医師は気分症状を治療したいと考えている割合が高く、軽症期と軽快期において、全ての症状に対し、患者さんよりも医師では治療したいと考えている割合が高い傾向があり、患者さんと医師では治療したい症状の認識に違いがあることがわかりました。

<社会機能の患者と医師の認識>

患者さんと医師との間で、社会機能に関する認識の相違を調べるため、FAST (Functioning Assessment Short Test:簡易社会機能評価)を用いた評価を行いました。社会機能とは、個人が家庭や職場、学校といったコミュニティの中で、あるいは家族、友人といった社会的関係性において、相応の社会的役割を果たすために発揮するべき機能を指し、FASTにより、自律性、職業機能、認知機能、経済的問題、対人関係、余暇の6つのカテゴリー、合計24の評価項目から合計点を集計し、患者さんの社会生活における障害を評価しました。 FAST合計スコアでは、全病期において患者さんより医師の方が高い結果となり、医師では、病期にかかわらず、患者さんの社会機能を常に患者さんに比べて低く評価する傾向がみられました(左図)。

また、FASTの6つのカテゴリーそれぞれについてFASTサブスコアを解析したところ、患者さんの病期にかかわらず、自律性、職業機能、認知機能、経済的問題、対人関係、余暇の全カテゴリーにおいて、医師は患者さんより社会機能の評価が低い結果となり、FAST合計スコアでの結果と同じ傾向が見られました(下図)。

「治療に期待すること」では、医師は重症期から軽快期に向かうにつれて、「元の生活に戻れること」を考える割合が増えていく一方、患者さんでは「副作用が起きないこと」を希望する割合が増える傾向があり、患者さんと医師では治療に期待することに相違があることがわかりました。

<精神疾患における社会機能評価について>
社会機能とは、個人が家庭や職場、学校といったコミュニティの中で、あるいは家族、友人といった社会的関係性において、相応の社会的役割を果たすために発揮するべき機能を指します。社会機能の評価方法としては、FAST (Functioning Assessment Short Test:簡易社会機能評価)が知られ、自律性、職業機能、認知機能、経済的問題、対人関係、余暇の6つのカテゴリー、合計24の評価項目から合計点を集計し、患者さんの社会生活での障害を評価する方法です。
(Rosa AR et al., 2007, Clin Pract Epidemiol Ment Health. Validity and reliability of the Functioning Assessment Short Test (FAST) in bipolar disorder   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1904447/ を参照し和訳)

<武田薬品について>
武田薬品工業株式会社(TSE:4502/NYSE:TAK)は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。武田薬品は、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために」という約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続ける未来を目指します。研究開発においては、オンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤とワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80の国と地域で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。詳細についてはhttps://www.takeda.comをご覧ください。

<ルンドベック(H.Lundbeck A/S) について>
ルンドベックは精神・神経疾患に特化したグローバル製薬企業です。 70年以上にわたり精神・神経科学研究の最前線に立ち、日々すべての人が最善の状態になれることを目指して、ルンドベックの存在意義である脳の健康を回復することに注力しています。世界で推定7億人を超える人々が精神・神経疾患を抱えて暮らしています。そしてあまりにも多くの人々が適切な治療を受けていない、偏見にさらされている、勤務日数が減少する、早期退職をせざるをえないなどの状況に苦しんでいます。私たちルンドベックは日々、精神・神経疾患を患っている人々の治療の向上と、より良い生活のために努力を惜しみません。その取り組みを「Progress in Mind」(プログレス・イン・マインド)と呼んでいます。ルンドベックは、現在50ヵ国以上、約5,600人以上の社員を擁し、研究、開発、製造、マーケティング、販売に従事しています。また、製品は100ヵ国以上で販売されており、研究センターはデンマーク及び米国、製造工場はデンマーク、フランス、イタリアにあります。2020年の収益は約177億デンマーククローネ(24億ユーロ、27億米ドル)でした。ルンドベックに関する詳しい情報は、www.lundbeck.comをご覧ください。

<ルンドベック・ジャパンについて>
ルンドベック・ジャパンは、2001年に日本法人を設立、2019年にトリンテリックス®のコ・プロモーションのため、コマーシャル本部を構築し営業活動を開始いたしました。精神・神経疾患領域に特化した製薬企業として、グローバルで蓄積した豊富な知識と知見をもとに、日本においても患者さんの治療向上とより良い生活に貢献するために取り組んでいます。ルンドベック・ジャパンに関する詳しい情報は、www.lundbeck.co.jp をご覧ください。

 

【調査概要】

■ 調査名:

患者と医師の観点からのうつ症状の認識と治療への期待の異同に関する検討

■ 調査時期:

患者調査:2020年3月20日-4月12日
医師調査:2020年4月17日-5月14日

■ 調査地域:

日本全国

■ 調査方法:

患者:楽天インサイトパネル登録患者へのインターネット調査
医師:株式会社MCIに診療科目「精神科」「心療内科」を登録する医師へのインターネット調査(医師に患者さん回答の一部を提示し、医師調査を実施(回答のマッチング))

■ 調査対象:

患者:(1)うつ病と診断され、通院している (2)現在うつ病治療のために薬を服用している、または過去3か月以内に薬を服用していた (3)20歳以上、65歳以下で、 (4)過去の最もうつ病症状が重い時期についてPHQ-9を実施し、総得点で10点以上の患者を対象
医師:(1)精神科医または心療内科医であり、かつうつ病・うつ状態の患者を1ヶ月あたり40人以上診療している (2)診療したうつ病患者のうち、75%以上の患者に抗うつ薬を処方している医師を対象

■ 解析対象回答数:

828 (患者さん828名、医師326名)

■ 解析方法:

対応する病期の患者さん群と医師群間で一般化推定方程式を用いて解析