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希少疾患の患者さんに捧げる壁画 | 武田薬品

シマウマの壁画とテイラー・スミス

希少疾患の患者さんに捧げる壁画

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December 14, 2023

「なぜシマウマを描いているの?」と、テイラー・スミスは何度も同じ質問を同僚から受けました。

2022 年の夏、テイラー は多くの夜と週末を米国ジョージア州のコビントン工場で過ごしました。この工場では、希少疾患や複雑な慢性疾患を抱える患者さんのために、血漿分画製剤を製造しています。彼女はこの大規模な製造施設でシニア品質保証スペシャリストとして働いていますが、今回のプロジェクトは文字通り、彼女の本業を超えるものでした。彼女はコビントン工場の廊下の壁に、アフリカのサバンナを約 6 × 4 メートルにわたり描いていました。

コビントン工場のリーダーシップチームは、真っ白な壁を明るくすると同時に、私たちが患者さんの暮らしを豊かにすることに心を砕いているのを示す革新的な方法を探していました。

「誰か壁画を描きたい人はいませんか?」という社内メールを見た テイラーは、ためらうことなく手を挙げました。彼女は描くべきものもわかっていました。2017 年にジョージア州アトランタで開催された原発性免疫不全症候群(PI)の啓発活動にテイラー は参加し、PI やその他多くの希少疾患の米国における公式マスコットがシマウマであることを知ったのです。コビントン工場では、先天的に免疫系に欠陥がある希少疾患であるPI患者さんのための血漿分画製剤を製造しています。

「壁画を描いた経験はありませんが、ペットの絵を描くのは得意でした」と、彼女は語ります。「動物が大好きだったので、『シマウマがいるサファリの景色はどうでしょうか? 私たちの存在意義を表現できるし、かわいくて心が落ち着くと思います』と提案しました」

コビントン工場のコミュニケーションヘッドである ガブリエル・コウリは、テイラーのアイデアを気に入りました。医療分野の格言「ひづめの音が聞こえたら、シマウマではなく馬を捜せ1」に通じているからです。米国でシマウマは珍しい存在で、この格言は希少疾患のことを示しています。

「シマウマは、希少疾患のマスコットとして広く用いられています。その診断に非常に時間がかかるという問題の本質を突いています」と、ガブリエルは言います。「米国では、PI と診断されるまでに平均 で12 年かかると推計されています2。私たちが取り組むべきことは多く残されていますが、患者さんのためにできる限りのことをしようと努めています」

シマウマを描くことで、コビントン工場が患者さんの暮らしを豊かにすべく懸命に取り組んでいることを示せるのです。

米国でシマウマをマスコットとして使用することは、PIが希少疾患であっても症状は他の病気と似ていることを、世の中の人々や医師に知らせる上ですばらしい方法と思います。ひづめの音は同じように聞こえても、同じ動物ではないのです

国際原発性免疫不全症患者会 マルチーヌ・ページェント プレジデント

シマウマ、バク、宇宙飛行士、そして青い熊


米国ではシマウマがPIのマスコットとして使用されていますが、他の国では別のマスコットを使用している例もあります。そこには、それぞれの文化が反映され、その国でPIがどのような存在かが映し出されています。例えば、マレーシアではバクがPIのマスコットです。バクは絶滅危惧種で、サイやパンダ、アリクイと混同されることが少なくありません。中国では宇宙飛行士を使って、PIの患者さんを細菌から守る重要性を伝えています。フランスでは大人サイズの青い熊をマスコットとして使用しGo to https://associationiris.org/、患者さんの強さと、PIが小児の疾患ではないことを示しています。

Martine Pergent

国際原発性免疫不全症患者会 マルチーヌ・ページェント プレジデント

International Patient Organization for Primary ImmunodeficiencyGo to https://ipopi.org/(国際原発性免疫不全症患者会)のマルチーヌ・ページェント プレジデントは、こうしたマスコットには、各国がPIと向き合う上で抱える困難が表れていると語ります。

「世界中どこでも、PIと正しく診断されるまでに長い時間がかかっています3」と、彼女は話します。「最終的に、ほとんどの患者さんが正しい診断を受けますが、他の病気と症状が似ているため診断は遅れがちです。米国でシマウマをマスコットとして使用することは、PIが希少疾患であっても症状は他の病気と似ていることを、世の中の人々や医師に知らせる上ですばらしい方法と思います。ひづめの音は同じように聞こえても、同じ動物ではないのです」

壁画作成風景を1分でまとめたタイムラプス動画をご覧ください

気分はインフルエンサー


壁画を描くのに一番の障壁となったのは、その大きさです。テイラー は、完成までに 150 時間ぐらい費やしたと当時の苦労を振り返ります。一方で、その間に工場の従業員と交流できたので、価値のある経験となりました。

「シマウマが希少疾患の象徴というのを知っている人は、ほとんどいませんでした。今回、壁画を描いたことで多くの仲間と交流し、そのことを広く伝えられました。ちょっとしたインフルエンサーになった気分です」と、彼女は振り返ります。

壁画が完成した今、24 時間年中無休で稼働するコビントン工場で働く 1,300 人の仲間の団結はいっそう強まりました。この壁画は、工場を訪れる人にとっても、従業員にとっても観光スポットのようになったと ガブリエル は言います。

「社外の人を迎えたとき、シマウマに込められた意味がわかる人は誰一人いません」と、彼は言います。「新たに入社した従業員の多くは、タケダがどのような病気に取り組んでいるかは知っていても、詳細までは知りません。この壁画のおかげで、単純に疾患を説明するのとは違ったアプローチをとれます。この壁画は視覚に訴え、ストーリーを伝えてくれるのです」

テイラー は、壁画を描いたことにより、患者さんに尽力してきたタケダの歴史にスポットライトを当てる機会が得られたと言います。壁画を見た患者さんの反応からも、それは明らかでした。

「なかには、感情をあらわにし、薬を作っている人たちの気持ちについて語ってくれた人もいました」と、彼女は話します。「毎日同じ仕事をするなかで、この壁画を見ることで、自分が何のためにその仕事をしているのかを思い出せます。この壁画は、私たちの最終的な目標を視覚的に思い出させてくれるのです」