「ALUNBRIG™」(一般名:brigatinib)の ALK陽性転移性非小細胞肺がんに対する米国における販売許可取得について
「ALUNBRIG™」(一般名:brigatinib)の ALK陽性転移性非小細胞肺がんに対する米国における販売許可取得について
- クリゾチニブ投与中に進行した、あるいはクリゾチニブ不認容のALK陽性非小細胞肺がんに対する治療剤と して承認を取得
当社は、このたび、「ALUNBRIG™」 (一般名:brigatinib)について、クリゾチニブ投与中に進行した、あるいはクリゾチニブ不認容の未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)の転移性非小細胞肺がんに対する治療剤として、米国食品医薬品局(FDA)より販売許可を取得しましたのでお知らせします。本適応については、腫瘍奏効率および奏効期間に基づき、迅速承認制度に則り販売許可を取得しました。本適応症の承認継続の可否については、確認試験における臨床ベネフィットの検証によって決定されます。本剤は、FDAからBreakthrough Therapy(画期的な治療薬)に指定されており、食事の影響なく投与できる1日1回の経口剤です。
コロラド大学Thoracic Oncology部門のDirectorであるRoss Camidge医師は、「近年、低分子ALK阻害剤は、進行性ALK陽性非小細胞肺がんを患っている患者さんの治療選択肢に革命をもたらしています。しかしながら、良好な安全性プロファイルを有し、脳転移を含むクリゾチニブ抵抗性の患者さんにも効果が期待できるbrigatinib (ALUNBRIG)などの新規ALK阻害剤に対するニーズは依然として存在します。ALTA試験では、brigatinib (ALUNBRIG)を1日1回180mg(1日1回90mgを7日間投与した後、180mgへ増量)投与したクリゾチニブ既治療群の大半において全奏効および1年以上の奏効期間中央値が示され、非常に有効であると評価されました。最も注目すべきは、脳転移がある患者さんにおける効果が顕著であった点です」と述べています。
Addario Lung Cancer Foundation (ALCF)の創設者であり理事であるBonnie Addario氏は、「病気の進行に対し不安を抱えている、クリゾチニブ投与中に進行した、あるいはクリゾチニブ不認容の転移性ALK陽性非小細胞肺がん患者さんおよび脳転移により計り知れない影響を受ける可能性がある患者さんにとって、ALUNBRIGの承認は新たな希望をもたらします」と述べています。
当社取締役Chief Medical and Scientific OfficerのAndy Plumpは、「ALUNBRIGを迅速に開発できたのは、ALK陽性非小細胞肺がん患者さんのアンメットメディカルニーズに対応するため、この新規治療薬を慎重にデザインし開発した数多くの研究者や臨床医の方々の献身の賜物です。何よりもまず、臨床試験にご協力いただいた患者さんおよびそのご家族に感謝申し上げます」と述べています。
当社Oncology Business UnitのPresidentであるChristophe Bianchiは、「今回のALUNBRIGの承認は、クリゾチニブ投与中に進行した、あるいはクリゾチニブ不認容の転移性ALK陽性非小細胞肺がんの治療における重要なマイルストンです。当社は、今後もより多くの患者さんにこの重要な治療剤をお届けできるよう、ALUNBRIGのグローバルでの開発に引き続き取り組んでまいります」と述べています」と述べています。
<ALTA試験について>
今回のFDAによるALUNBRIGの承認は、成人患者を対象としたbrigatinibの主要な臨床第2相ALTA(ALK in Lung Cancer Trial of AP26113)試験に基づいています。本試験は、クリゾチニブ投与中に進行した222名の局所進行性あるいは転移性ALK陽性非小細胞肺がん患者を対象とした現在進行中の非盲検多施設共同二群試験で、患者はALUNBRIG 90mg1日1回 (n=112)、またはALUNBRIG 180mg 1日1回(90mg1日1回を7日間投与した後、180mgへ増量)(n=110)の投与を受けました。主要有効性評価項目は、固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECIST v1.1)に従った確定された全奏効率とし、独立審査委員会によって評価されました。その他の有効性評価項目として、治験責任医師の評価による全奏効率、奏効期間、頭蓋内全奏効率および頭蓋内奏効期間を設定しました。
ALUNBRIGの最初の7日間の推奨用量レジメンは、90mg1日1回経口投与です。最初の7日間において90mgの忍容性に問題がなければ、180mg1日1回経口投与に増量します。
追跡期間中央値の8カ月(範囲:0.1ヶ月~20.2ヶ月)では、推奨投与量レジメンの患者群(90mgから180mgに増量)において、独立審査委員会による評価における全奏効率は53%、治験責任医師の評価における全奏効率は54%でした。推奨投与量レジメンにおける奏効期間中央値は、独立審査委員会の評価では13.8ヶ月、治験責任医師の評価では11.1カ月でした。また、推奨投与量レジメンにおいて、判定可能な脳転移を有する患者(n=18)に対する独立審査委員会評価で確認された頭蓋内全奏効率は67%でした。
有効性データ
ALTA試験の結果
有効性指標 |
独立審査委員会による評価 |
治験責任医師による評価 | ||
90 mg 1日1回 (N=112) |
90→180 mg 1日1回 (N=110) |
90 mg 1日1回 (N=112) |
90→180 mg 1日1回 (N=110) | |
全奏効率 (95%CI) |
48% (39-58) |
53% (43-62) |
45% (35-54) |
54% (44-63) |
完全奏効 (%) |
4名 (3.6%) |
5名 (4.5%) |
1名 (0.9%) |
4名 (3.6%) |
部分奏効 (%) |
50 名 (45%) |
53 名 (48%) |
49名 (44%) |
55名 (50%) |
奏効期間の中央値 (95%CI) |
13.8ヶ月 (7.4-NE) |
13.8ヶ月 (9.3-NE) |
13.8ヶ月 (5.6-13.8) |
11.1ヶ月 (9.2-13.8) |
CI = Confidence Interval; NE = Not Estimable
頭蓋内の有効性に対する独立審査委員会による評価
ALTA試験における測定可能な脳転移患者の頭蓋内奏効
有効性指標 |
独立審査委員会による評価 | |
90 mg 1日1回 (N=26) |
90→180 mg 1日1回 (N=18) | |
頭蓋内奏効率 (95%CI) |
42% (23-63) |
67% (41-87) |
完全奏効 (%) |
2名 (7.7%) |
0名 |
部分奏効 (%) |
9名 (35%) |
12名 (67%) |
奏効期間の中央値 (範囲) |
NE (1.9+ - 9.2+) |
5.6ヶ月 (1.9+ - 9.2+) |
CI = Confidence Interval; NE = Not Estimable
脳転移があった患者23名において、90mg投与群の78%および90mgから180mgへの増量群の68%の患者が少なくとも4ヶ月の奏効を維持しました。
ALUNBRIGの警告および注意は、間質性肺疾患/肺炎、高血圧症、徐脈、視覚障害、クレアチン・フォスフォキナーゼ(CPK)上昇、膵酵素上昇、高血糖、胚・胎児毒性です。
重篤な副作用は、90mg投与群の38%、90mgから180mgへの増量群の40%で発現しました。最も多く報告された重篤な副作用は肺炎(全体で5.5%、90mg投与群では3.7%、90mgから180mgへの増量群では7.3%)および間質性肺炎(全体で4.6%、90mg投与群では1.8%、90mgから180mgへの増量群では7.3%)でした。致死的な副作用は3.7%の患者において発現し、肺炎(2名)、突然死、呼吸困難、呼吸不全、肺塞栓症、細菌性髄膜炎、および尿路性敗血症(それぞれ1名)が含まれます。
推奨投与量レジメンにおいて、ALUNBRIGで最も多く報告された副作用(25%以上)は悪心、下痢、疲労、咳嗽、および頭痛でした。
<ALK陽性非小細胞肺がんについて>
American Cancer Society (米国がん協会)によると、最も一般的な肺がんである非小細胞肺がんは、米国において毎年診断される222,500名の新規肺がん症例の約85%を占めています。遺伝子研究の結果、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の染色体転座は非小細胞肺がん患者の小集団においても重要ながん進行因子であることが判明しました。非小細胞肺がん患者の約2%から8%がこのALK融合遺伝子を有しているとされています。
中枢神経系はALK陽性非小細胞肺がんの進行によって転移が多く見られる臓器であり、ALK阻害剤によるファーストライン治療を受けたALK陽性非小細胞肺がん患者の最大70%で脳転移の可能性があります。
<ALUNBRIG™ (一般名: brigatinib)について>
ALUNBRIGは、2017年2月に当社が買収したARIAD Pharmaceuticals, Inc.が創出した分子標的がん治療薬です。ALUNBRIGは、クリゾチニブ抵抗性のALK陽性非小細胞肺がん患者に対する治療としてFDAよりBreakthrough Therapyに指定されるとともに、ALK陽性非小細胞肺がん患者およびROS1陽性とEGFR陽性の 非小細胞肺がん患者に対する治療としてFDAよりオーファン・ドラッグとして指定されました。また、2017年2月にALUNBRIGに関する販売許可申請を欧州医薬品庁(EMA)に提出しました。
今回の承認により、世界中のALK陽性非小細胞肺がん患者およびその治療に携わっている医療従事者のために革新的な治療薬を開発するという当社の取り組みが強化されます。なお、現在実施中の臨床第1/2相試験および臨床第2相ALTA試験の他に、ALK阻害剤未治療の局所進行性または転移性ALK陽性非小細胞肺がん患者を対象としてbrigatinibの有効性および安全性について評価するクリゾチニブとの比較臨床第3相ALTA 1L試験を実施中です。
ALUNBRIGに関する詳細は、ALUNBRIGのウェブサイトwww.ALUNBRIG.com をご覧ください。
Brigatinibの臨床試験に関する詳細は、www.clinicaltrials.govをご覧下さい。
以上